セッション情報 ランチョンセミナー(消化器外科学会)

痔核の低侵襲治療―ALTAによる治療―

タイトル ラン65-1:

痔核の低侵襲治療~ALTAによる治療~

演者 齋藤 徹(大阪北逓信病院)
共同演者
抄録 痔核は肛門科や外科の外来を訪れる患者さんの中で最も多い疾病であり,肛門疾患の約60%を占める.多くは保存的治療法の対象であるが,痔核が脱肛する,すなわちGoligher分類の2度以上になると,保存的治療法では根治を期待できなくなり,手術的(診療報酬点数表の痔核手術K743の項目に該当する)治療法が必要になる. 過去にはWhitehead手術法が行われ,肛門管上皮や肛門管上皮下の組織,いわゆるクッションを広範囲に切除したことに基づく後遺症(直腸粘膜脱,肛門狭窄,肛門弛緩,粘膜下の静脈瘤)に今でも苦しんでいる人は多い.最近は肛門管を構成する組織を可及的に少なく切除する痔核結紮切除術が標準術式となり,合併症の種類と頻度は激減した.しかし,輸血が必要となる大量出血を来す晩期出血が一定の比率で生じること,手術後2-4週間は排便時の疼痛を生じること,肛門上皮の取り過ぎにより肛門狭窄や排便障害(ガスの排出と便の排出の区別が出来ない)の後遺症を生じること,狭いspaceで根治性・機能性・デザインを追及しなければならず,難しい手術であることなどが課題である. 2005年3月に発売されたALTA(Aluminum Potassium Sulfate・Tannic Acid)溶液を用いたALTA療法は優れた成績(高い根治性,低い再発率),低侵襲(肛門管上皮や皮膚を傷つけない),高い患者満足度(術後の疼痛が少ない,QOLが高い)の治療法である.当院でALTA療法を施行した症例は2012年12月末までに2500例を越えているが,痔核の手術的治療法の57.5%と,痔核結紮切除術の39%,PPHの7.2%を凌駕している.合併症は発熱,出血,痛み,疼痛,鈍痛,偉和感,不快感,下痢,便秘などであるが重篤なものはなく,発生頻度も低い.再発率は4.6%と低く,1痔核当たりの投与量が少ない症例(6mL以下),大きな外痔核や皮垂を伴う症例,内痔核が大きい症例,内痔核間が連なる粘膜脱型の痔核症例に再発を認めた.
索引用語