抄録 |
[目的] 肝弾性度測定は,非侵襲的肝線維化推定法として普及してきた.またtype IV collagen7s(IVcol7s)やFIB-4は,血液検査成績から算出される簡便な線維化マーカーとして知られる.一方,造影超音波からみた肝における気泡の循環動態も,肝線維化を反映すると報告されている.今回我々は,これら4種の非侵襲的肝線維化マーカーにおける診断能を前向き研究にて比較検討し,多様な線維化推定因子の実践的な使用法について考察した.[方法]対象は,組織学的に診断された慢性肝疾患77例(男31,女46,年齢51.1±13.3歳; F1 19,F2 20,F3 18,F4 20)である.全例で4つの検査,すなわち肝弾性度測定(Fibroscan502,10回の計測値の中央値),ソナゾイド造影超音波(門脈右枝・肝実質最大輝度比到達時間、Liver Int2010),IVcol7s,FIB-4が施行され各検査法について,単一あるいは組み合わせ検査としての肝線維化の診断能をROC解析にて比較検討した.本臨床研究は,倫理委員会で承認され各症例の同意のもとで施行された.[成績]1.単一検査法での比較:ROC曲線下面積(AUC)は,≧F2に対してはFIB-4が最も優れ(0.83;95% confidence interval(CI), 0.71-0.91),次いで造影超音波(0.81;95%CI, 0.67-0.90)および肝弾性値(0.81;95%CI 0.67-0.90)が優れていた.≧F3では肝弾性値(0.86;95%CI, 0.74-0.93),次いで造影超音波(0.80;95%CI 0.67-0.80)が,またF4にはIVcol7s(0.92; 95%CI, 0.83-0.96)が最良で,次に肝弾性値(0.91;95%CI,0.72‐0.95)およびFIB-4(0.91;95%CI, 0.81‐0.96)であった.2. 組み合わせ検査法での比較:≧F2に対するAUCは,造影超音波とFIB-4の組み合わせが0.87(95%CI,0.74-0.94)と優れていた.同様に≧F3では造影超音波と肝弾性値の組み合わせ0.90(95%CI, 0.80-0.95)が優れており,F4についても造影超音波と肝弾性値の組み合わせ1.00(95%CI,0.97-1.00)が最善であった.[結語] 非侵襲的な肝線維化の推定には単一検査よりも組み合わせによる検査が勝っていた。特に画像診断である造影超音波や肝弾性度測定は,その軸となる検査法である. |