抄録 |
【目的】市区町村の胃がん検診は受診率が低下し、これを補うためにABCリスク検診導入が検討されている。演者は市区町村と健保組合の対策型検診に関わっていることから、その受診率よりABCリスク検診の導入意義を考察した。【方法】市区町村と健保組合の対策型検診の受診率は、厚労省のホームページから取得した。生活習慣病検診の内訳は、社会保険滋賀病院健康管理センターのデータを利用した。【結果・考察】市区町村の対策型胃がん検診受診率は全国で平成18年度12.1%から平成22年度9.6%に低下してきている。組合健保の特定健診受診率は平成21年度には被保険者で69.5%(私学共済)~84.3%(国共済)と高いが、被扶養者では16.1%(国共済)~36.5%(組合健保)と低い。協会けんぽの特定健診受診率は被保険者38.7%、被扶養者12.2%とどちらも低い。組合健保の被保険者の特定健診は生活習慣病予防健診として通常対策型胃がん検診を受けることになっており、社会保険滋賀病院の平成22年度の実績では被保険者の生活習慣病予防健診受診者24900人の胃X線または内視鏡検診受診率は82.8%と高い。しかし、被扶養者の特定健診には通常胃がん検診が含まれていないため、被扶養者の胃がん検診受診率は特定健診受診率よりもさらに低いと推定される。この傾向は協会けんぽについても当てはまると考えられる。したがって、組合健保の被保険者の胃がん検診受診率は60%以上あると推定されるが、組合健保の被扶養者、および協会けんぽ加入者の胃がん検診受診率は多くても30%程度であると推定された。一方、国保加入者の特定健診受診率は31.4%であり、市区町村の胃がん検診受診率より約20ポイント高い。このことから、市区町村や健保組合の特定健診のみの受診者に血液検査で同時に行なえるABCリスク検診を導入すると胃がん検診受診率を向上させることが期待できる。【結論】組合健保の被保険者の胃がん検診受診率は高いが、それ以外の対象者では受診率が低い。これらの対象者では、特定健診時に血液検査で同時に行なえるABCリスク検診を導入する意義がある。 |