抄録 |
【背景】 NAFLDにおいて進行性病変であるNASHの診断には肝生検が必須であるが、侵襲性、経済面からNAFLD全例に施行することは困難である。我々は、脂肪に溶解しやすいxenon gasを吸入し、単純CTにて評価するXenon CT(Xe-CT)を用いNAFLDの病態解析を行ってきた(J of Gastroenterology 2012 in press)。今回、Xe-CTによるNAFLD病期診断につき検討した。【方法】対象はNAFLD 76例(男;女=44;32,50.1±16.2歳,BMI;28.0±4.5kg/m2)、全例で肝生検を施行し、単純性脂肪肝(SS) 10例、Brunt分類でNASH stage1/2/3/4=26/21/12/7例に分類した。Xe-CTの撮影と解析は既報の方法で行い、全肝のXe gasの溶解度であるλ値、および門脈血流量(PVTBF),肝動脈血流量(HATBF),総肝血流量(THTBF)[ml/100ml/min]を測定した。【結果】λ値は各steatosis gradeでG1;1.7±0.8,G2;2.3±0.7,G3;3.2±0.8,群間ではG1vsG2;P<0.01,G2vsG3;P<0.01,G1vsG3;P<0.001と脂肪化を反映した。PVTBFはSS;42.8±6.4/Stage1;34.4±7.7/Stage2;33.0±7.3/Stage3;29.3±7.2/Stage4;28.7±6.8でSSとStage1と全ての群間に有意差を認めた(P<0.05,P<0.01,P<0.001,P<0.01)。HATBFは各群間に差を認めず、THTBFはSS;69.1±13.0/Stage1;57.4±14.4/Stage2;50.6±12.3/Stage3;10.2±15.0/Stage4;44.4±8.0でSSとStage2/3/4の各群間に有意差を認めた(P<0.01,P<0.05,P<0.01)。【考案】λ値は肝生検組織の脂肪化の程度と良い相関を認めた。SSとstage1,stage2である早期のNASHの間に有意な血流量の低下が認められ鑑別に有用と考えられた。肝生検は肝の一部の評価であるため臨床診断と乖離する例が存在する。これら症例ではXe-CTは全肝の評価のためか、臨床診断を支持する結果が認められ相補的な診断としても有用と思われた。【結論】Xe-CTは全肝における脂肪と血流の定量が可能でありNAFLDの低侵襲な病期診断として有用である。 |