セッション情報 ワークショップ12(肝臓学会・消化器病学会合同)

日常臨床のジレンマ-NASHかASHか?

タイトル 消W12-1:

脂肪性肝疾患における中等量飲酒の影響

演者 土居 忠(王子総合病院・消化器内科)
共同演者 奥田 敏徳(王子総合病院・消化器内科), 南 伸弥(王子総合病院・消化器内科)
抄録 【はじめに】日常臨床においては肥満と中等量の飲酒習慣が併存し、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)にもアルコール性にも該当しない脂肪性肝疾患を多数経験する。肥満はアルコール性肝障害の増悪因子であることが指摘されているが、逆に飲酒が肥満に起因する脂肪性肝障害にどのような影響を及ぼしているのかについては十分検討されていない。今回は中等量(エタノールとして1日20g以上60g未満)飲酒肥満者の脂肪性肝疾患における飲酒の影響を検討した。【対象・方法】2010年に当院にて腹部エコーを含む健診を受診した3344名(男性2402名、女性942名、平均年齢男性58.3歳、女性56.5歳)を対象に、問診により調査した食事、運動、飲酒の各生活習慣と肥満、糖代謝異常、脂質異常、腹部エコーによる脂肪肝の頻度との関連について検討した。また脂肪性肝障害患者に対する外来栄養サポートプログラムに参加した中等量飲酒肥満者19症例を対象に肝障害に及ぼす飲酒習慣を含む生活習慣改善の影響を検討した。【結果】脂肪肝の頻度に及ぼす飲酒と肥満の影響を男女別に検討したところ、男性では非飲酒+少量飲酒(20g/日未満)よりも中等量飲酒で脂肪肝の頻度はむしろ低下したが、女性では中等量飲酒による脂肪肝頻度の低下は明らかではなかった。また多重ロジスティック回帰分析により脂肪肝のリスク因子を解析したところ肥満や空腹時高血糖、脂質異常などの過栄養関連因子と性別(男性)には脂肪肝頻度の増加と有意な関連性が認められたが、逆に中等量飲酒は脂肪肝頻度の低下と関連する独立した因子であった。また中等量飲酒肥満者の脂肪性肝障害の改善には飲酒量の制限よりもむしろ肥満の是正が重要であった。【結語】健診受診者群の検討からは中等量飲酒は脂肪性肝障害の発生をむしろ抑制する可能性が示され、中等量飲酒肥満者の脂肪性肝疾患の成立には肥満が主たる因子であることが示唆された。これまでのNAFLDの概念にとらわれない、より実態に即した脂肪性肝疾患の捉え方が必要である。
索引用語 NAFLD, アルコール性肝障害