セッション情報 ワークショップ12(肝臓学会・消化器病学会合同)

日常臨床のジレンマ-NASHかASHか?

タイトル 肝W12-2:

肥満と脂肪肝の関係における飲酒の影響

演者 守屋 昭男(三豊総合病院・消化器科)
共同演者 岩崎 良章(岡山大保健管理センター), 大口 創平(淳風会健康管理センター)
抄録 【目的】過度の飲酒はアルコール性肝障害を惹起し得ることが知られている一方で、近年では適度の飲酒は脂肪肝を防ぐ可能性を示唆する報告も散見される。今回われわれは、常習飲酒者に認められる脂肪肝について肥満と飲酒それぞれの影響を検討した。【方法】腹部超音波検査を含む人間ドック受診者6130名から肝疾患既往またはデータ欠損例を除外した5608名(年齢中央値49歳)を対象とした。そのうち質問票にて飲酒しないと回答した男性1109名および女性1005名、毎日飲酒すると回答した男性1559名および女性130名についてBMIを18.5未満(低体重)/18以上25未満(標準体重)/25以上(肥満)の3群に、一日あたりの飲酒量を20g未満/20-40g/40-60g/60-80g/80g以上の5群に層別化し、各群について腹部超音波検査で認められた脂肪肝の有病率を解析した。【成績】男性において脂肪肝有病率は非飲酒者の37%に対し、飲酒者で26%と有意に低くかった(P<0.001)。非飲酒者でのBMI別の脂肪肝有病率は低体重群:0% (0/50)、標準体重群:25% (180/715)、肥満群:67% (231/344)だった。飲酒者では、順に1.4% (1/72)、18% (200/1119)、55% (204/368)であり、標準体重(P<0.001)および肥満(P=0.002)では、飲酒群で有意に低かった。さらに飲酒量を層別化して解析すると、標準体重群および肥満群では80g/日以上の飲酒で、それぞれ36%、79%と非飲酒群の脂肪肝有病率を上回り、特に標準体重群では飲酒量と脂肪肝有病率に有意な正のトレンドが認められた(P for trend=0.011)。女性における脂肪肝有病率は非飲酒者の16%に対し飲酒者で11%、BMI別では非飲酒者で順に0% (0/122)、10% (73/723)、55% (88/160)、飲酒者で0% (0/21)、9% (9/96)、46% (6/13)だったが、飲酒群で低かったが、有意ではなかった。【結論】男性において、飲酒は脂肪肝有病率を低下させる可能性が認められた一方で、飲酒量の増加は脂肪肝有病率の増加に繋がり、80g/日以上では脂肪肝有病率は非飲酒者以上となった。
索引用語 NAFLD, アルコール性肝障害