セッション情報 ワークショップ12(肝臓学会・消化器病学会合同)

日常臨床のジレンマ-NASHかASHか?

タイトル 肝W12-3:

断酒は体脂肪量を変化させずに肝脂肪化とインスリン抵抗性を改善する-問題飲酒者101例の断酒における前向き研究より-

演者 藤田 尚己(三重大大学院・消化器内科学)
共同演者 原田 雅典(三重県立こころの医療センター・精神科), 竹井 謙之(三重大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】多量飲酒は脂肪肝の原因となる。ラットを用い解析によりアルコールによる肝でのNADH蓄積による直接的な脂肪酸合成促進作用が示されているが、実臨床でみられる脂肪肝がアルコールによる直接作用によるものなのか、これと糖脂質代謝との関連性など、解明すべき問題点は多い。そこで今回我々は問題飲酒者における肝脂肪化や糖脂質代謝に及ぼす断酒の影響をprospectiveに検討した。【方法】対象は当院(肝疾患加療目的が主)及びこころの医療センター(断酒治療目的)にて入院加療を行った101例(M/F=94/7例、55.5±12.1歳、入院直前の飲酒量=エタノール換算145±70g/日)。同患者に対して、身体骨格測定、糖脂質代謝などの血液検査、腹部CT検査などを定期的に施行し、断酒によるこれらの変化を検討した。【成績】断酒継続例においては肝脂肪化が有意に改善した[肝脾比=前:1.12±0.18→3M後:1.22±0.11(P<0.01)→6M後:1.23±0.14(P<0.01)]一方で、断酒失敗例では肝脂肪化が悪化した[肝脾比=前:1.12±0.17→3M後:1.10±0.13→6M後:1.04±020]。体重、BMI、ウエスト周囲径、Fat Scanにて計測した腹部内臓脂肪量には、断酒継続の有無に関らず有意な変化は認められなかった。血液検査所見では断酒継続例において、中性脂肪値[前:162±135→3M後:112±58(P<0.05)→6M後:124±54]、血糖値[前:137±61→3M後:113±48(P=0.01)→6M後:114±42(P=0.02)]、HOMA-IR[前:4.72±6.38→3M後:2.26±2.05(P<0.01)→6M後:2.60±2.34(P=0.03)]に有意な改善を認めたが、断酒失敗例では変化に乏しかった。尚、断酒開始時の肝脂肪化と中性脂肪値(r=-0.239、P=0.01)や飲酒量(r=-0.209、P=0.03)は有意な相関関係にあった。【考察】飲酒は体脂肪量を増加させずに中性脂肪を上昇させ、直接肝脂肪化やインスリン抵抗性を起こす可能性がある。またこれらの結果は、アルコール性に限らずNASHにおいても、肝脂肪化によるインスリン抵抗性獲得の可能性を示している。
索引用語 断酒, prospective study