抄録 |
【目的】食生活の欧米化と飲酒習慣による肥満および脂肪肝の増加が懸念されている。飲酒は脂肪肝に対する重要な要因の一つとされているが、これまで我々は脂肪肝発症には飲酒よりも肥満の影響が重要であることを報告してきた。今回我々は、脂肪肝発症における危険因子について飲酒や肥満を含めた身体的項目および血液生化学的項目について多施設における大規模検診データーを用いて解析・検討を行ったので報告する。 【方法】腹部エコーを施行した健診受診者14312名(男9230名、女5082名)に対し、特定健診の質問表を用いた飲酒の有無および量により、非飲酒者(頻度:ほとんど飲まない、量:1合未満)と飲酒者に分け、脂肪肝合併の頻度およびそれに影響を与えている各種検査項目について、単変量および多変量解析を用いて検討を行った。 【成績】脂肪肝合併率は男性の飲酒者で39.4%、非飲酒者で43.0%(男性全体39.7%)、女性の飲酒者で13.5%、非飲酒者で20.3%(女性全体15.1%)と、男女ともに飲酒の有無による罹患率に差は認めなかった。脂肪肝の有無において単変量解析にて有意差を認めた各項目(BMI, 腹囲, FBS, TG, HDL-C, LDL-C)および飲酒を多重ロジスティック回帰分析にて、どの項目が脂肪肝発症の独立した因子であるかを検討したところ、腹囲(OR:男3.168、女2.885)、BMI(男2.373、女2.975)、FBS(男1.746、女2.992)、TG(男2.439女2.832)、HDL-C(男1.640)、LDL-C(男1.331女1.284)が独立因子として選択されたが、飲酒は男女とも選択されなかった。 【結論】男女ともに飲酒者の脂肪肝合併頻度は非飲酒者と同程度であった。脂肪肝の発症において、飲酒よりも肥満、腹囲、および耐糖能異常、脂質異常症がより重要な危険因子となっていることが明らかとなった。このことから、脂肪肝を有する飲酒者に対しては、禁酒の指導とともに体重、腹囲の測定および糖質・脂質異常の改善とその指導がより重要であることが示唆された。 |