セッション情報 ワークショップ12(肝臓学会・消化器病学会合同)

日常臨床のジレンマ-NASHかASHか?

タイトル 肝W12-5:

我が国における中程度飲酒者の脂肪性肝硬変の実態 ―第15回日本肝臓学会大会特別企画「我が国における非B非C肝硬変の実態調査」の全国集計解析―

演者 鈴木 康秋(名寄市立総合病院・消化器内科DELIMITER旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科)
共同演者 大竹 孝明(旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科), 高後 裕(旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科)
抄録 【はじめに】エタノール摂取1日20gから70gまでの中程度の飲酒歴を有する脂肪性肝障害は、アルコール性肝障害やNASHの診断基準を満たさないため、今まで集計がなされておらずその実態は明らかではない。昨年開催された第15回日本肝臓学会大会の特別企画「我が国における非B非C肝硬変の実態調査」において、このような中程度の飲酒者の脂肪性肝障害を基盤とした肝硬変症例を、「脂肪性肝硬変」と新たに定義し成因に加え、集計調査を行った。今回、「脂肪性肝硬変」のサブ解析を行ったので報告する。【対象】特別企画に応募した全国48施設から登録された非B非C肝硬変6.999例中、上記基準により「脂肪性肝硬変」と診断された173症例(2.5%)。【方法】「脂肪性肝硬変」の患者背景、合併症、予備能、発癌率、HBc抗体陽性率などを、アルコール性やNASH肝硬変と比較検討した。【結果】1,男女比は、脂肪性6.86、アルコール性7.12、NASH 0.77で、脂肪性とアルコール性は男性の比率が高かった。2,平均年齢は脂肪性64歳で、アルコール性(60歳)とNASH(67歳)の中間であった。3,平均BMIは脂肪性25で、アルコール性(23)とNASH(27)の中間であった。4,DM合併率は57%で、NASH(63%)と同様に高率であった。5,肝予備能は、アルコール性に比し、脂肪性とNASHは良好例が多かった。6,静脈瘤合併率は、アルコール性(52%)に比し、脂肪性(38%)とNASH(40%)は低かった。7,肝癌の合併率は、脂肪性54%、NASH 51%で、アルコール性(34%)より高かった。8,HBc抗体陽性率は脂肪性35%で、アルコール性・NASH(各31%)と同等であった。【まとめ】中等度飲酒者の脂肪性肝硬変は、アルコール性やNASHと同様の傾向があるが、発癌率はアルコール性に比べ高く、NASHと同様に厳重なフォローアップが必要である。
索引用語 非B非C肝硬変, 脂肪性肝硬変