セッション情報 ワークショップ12(肝臓学会・消化器病学会合同)

日常臨床のジレンマ-NASHかASHか?

タイトル 肝W12-9:

当院における肝癌症例のNASH、ASHの比較

演者 細川 貴範(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】NASHとASHは病理学的に類似するが、その類似性が臨床でどのように表れるのかは明らかではない。またPBCやAIHといった明らかな背景肝疾患を持たないcryptogenicとされる症例には、あるいはアルコール飲酒歴を正しく申告していないASHや、中等量飲酒者や肥満患者などNASHやASHの診断基準を満たさないNASHとASHの中間といった患者が多く含まれている可能性がある。【方法】今回我々は当院における初発肝細胞癌のうちNASHとASHおよび明らかな背景肝疾患を持たないcryptogenicの症例について臨床背景を比較検討した。【成績】ASH97例、NASH41例、cryptogenic72例について比較検討を行った。年齢はASHでやや若くcryptogenicでやや高齢な傾向を認めた。腫瘍径、腫瘍個数、AFP、PIVKA-2についてはそれぞれ有意差を認めなかった。AST, ALT、HbA1c、BMIは有意差を認めなかったが血小板、TG、PT%はASHで低く、γ-GTPはASHで高い傾向にあった。食道静脈瘤の合併はNASHで低く(67%)、ASH(97%)とcryptogenic(93%)は同等であった。再発率はNASH、ASH、cryptogenicの順に高かったが、生存率はそれぞれ有意差を認めなかった。【結論】ASH肝癌はNASHと比較しγGTPが高く、血小板、PT%、TGが低い傾向にあり、食道静脈瘤の合併が多かった。食道静脈瘤と血小板からはASHにおいてNASHと比較し門脈圧の高い可能性が示唆された。ASHも進行すると肝硬変に伴い糖尿病を合併してくること、NASH、ASHともにコレステロールの合成能が低下してくることから、発癌に至るまで進行した場合、NASHとASHの間には臨床的な差異はほとんど認めなかった。cryptogenicについてもNASH、ASHのどちらとも臨床的な差異は認めず、他の検討でもウイルス性肝癌と非B非C肝癌は予後が同等との報告もあり、発癌に至る前に進行を阻止することが重要であることが改めて確認された。
索引用語 NASH, ASH