セッション情報 ワークショップ12(肝臓学会・消化器病学会合同)

日常臨床のジレンマ-NASHかASHか?

タイトル 肝W12-10:

アルコール性肝障害および非アルコール性脂肪性肝炎の組織学的鑑別の検討

演者 野本 実(新潟大・3内科)
共同演者 青柳 豊(新潟大・3内科)
抄録 【目的】近年、非飲酒者のメタボリック症候群の肝での表現型として非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が日常診療で注目されている。一方、アルコール性肝障害は肝硬変の3大要因の一つとして重要な位置を占めている。NASHはアルコール性肝炎(ASH)類似の組織形態を示す事が知られており、組織鑑別を得る目的で今回の検討を行った。【方法】当科および関連病院で施行した肝生検の内、B型・C型慢性肝炎、自己免疫性肝疾患、薬物性肝障害を除外した飲酒群874例(日本酒換算1~2合/日57例、2~3合156例、3~5合307例、5~1升289例、1升以上65例)、非飲酒群248例(飲酒なし~0.5合/日)を対象とした。針生検ないしは剖検によって得られたパラフィン包埋下の標本をヘマトキシリン・エオジン染色、鍍銀染色、アザン・マロリー染色、鉄染色、PAS染色、消化PAS染色を行なって顕微鏡観察を行なった。【成績】《飲酒群の組織分類》脂肪肝102例、アルコール性線維化545例(門脈域線維化150例、Pericellular fibrosisを伴った門脈域線維化174例、小葉改築傾向およびPericellular fibrosisを伴った門脈域線維化108例、亜小葉性肝硬変113例)、アルコール性肝炎58例、特異的所見なし169例であった。アルコール性肝炎は全例(100%)で基礎にアルコール性線維化を認め、マロリー体、好中球浸潤を全例(100%)に、32例(55.2%)に胆汁うっ滞を認めacute on chronicの形態を示していた。また、門脈域に細胆管増生、中心静脈の線維性肥厚を高率に認めたが、肝細胞の膨化・腫大、グリコーゲン核は稀であった。《非飲酒群の組織分類》脂肪肝136例、NASH 112例(Brunt分類;Stage1-58例、Stage2-23例、Stage3-19例、Stage4-12例)であった。NASH例では全例にpericellular fibrosis、マロリー体、炎症性細胞浸潤、肝細胞膨化・腫大を認めたが、胆汁うっ滞像は認めなかった。また、肝細胞にグリコーゲン核を高率に認めた。脂肪肝は飲酒群と非飲酒群で差異は認めなかった。【結論】ASHとNASHは極めて類似した組織形態を示すが、詳細な検討により組織鑑別可能である。
索引用語 アルコール性肝障害, 非アルコール性脂肪性肝炎