セッション情報 |
ワークショップ12(肝臓学会・消化器病学会合同)
日常臨床のジレンマ-NASHかASHか?
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タイトル |
消W12-11:臨床パラメータを用いた、アルコール性肝疾患と非アルコール性脂肪性肝疾患の判別法
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演者 |
利國 信行(金沢医大・消化器内科) |
共同演者 |
林 伸彦(金沢医大・消化器内科), 堤 幹宏(金沢医大・消化器内科) |
抄録 |
【目的】アルコール性肝疾患(ALD)と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は共に単純性脂肪肝から肝硬変まで広いスペクトラムを有し、病理学的な共通点も多い疾患である。両者を鑑別するゴールドスタンダードは飲酒歴聴取であるが評価困難な場合もある。両者の簡便な判別法があれば、生活指導が迅速的確に行えると考えられる。【方法】厚生労働省研究班の「わが国における飲酒の実態把握およびアルコールに関連する生活習慣病とその対策に関連する総合的研究」に基づき、「アルコール性および非アルコール性脂肪肝症例に関する全国調査」を実施した。得られた回答のうち、生検で確定診断されたアルコール性脂肪肝52例、非アルコール性脂肪肝108例、非アルコール性脂肪性肝炎・肝硬変440例を用いた。さらに当院にて組織診断されたアルコール性肝線維症・肝硬変95例を加えた、合計695例(平均53.7歳、男性391例、女性304例)を対象とした。臨床パラメータを用いて多重ロジスティック回帰分析を行い、判別式を作成した。【成績】判別式(D)は以下の通り。D = -9.92 - 0.161 (BMI) + 1.60 (AST/ALT) + 0.00634 (γ-GTP) + 0.103 (MCV) + 1.03 (for male)。D>0ならALD、D<0ならNAFLDと判定。AUROCは0.936。ALDに対しては、sensitivity 66.7%、specificity 96.7%、PPV 84.5%、NPV 91.5%であった。肥満の有無(BMIカットオフ値 25)による判別能は以下の通り。BMI<25(268例)ではAUROC 0.932であり、ALDに対してはsensitivity 77.2%、specificity 92.2%、PPV 85.7%、NPV 87.0%と感度が上昇した。BMI≧25(427例)ではAUROC 0.914であり、ALDに対してはsensitivity 43.5%、specificity 98.7%、PPV 80.0%、NPV 93.5%と感度が低下した。【結論】臨床パラメータを用いた判別式はALDとNAFLDの鑑別に有用である。特にALDに対してはspecificityが高く、NAFLDに対してはsensitivityが高い。ただし両者がoverlapしていると考えられる病態では判別能が低下する。 |
索引用語 |
アルコール性肝疾患, 非アルコール性脂肪性肝疾患 |