セッション情報 ワークショップ12(肝臓学会・消化器病学会合同)

日常臨床のジレンマ-NASHかASHか?

タイトル 肝W12-12:

NAFLDとアルコール性肝障害の鑑別におけるアルコール性肝障害/NAFLD指数(ANI)の有用性

演者 藤井 英樹(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学)
共同演者 榎本 大(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学), 河田 則文(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学)
抄録 【背景】肝臓の病理像による肝線維化を伴うNASHとアルコール性肝線維症の鑑別は容易ではなく, 病歴に負うところが多い. Mayo Clinicは平均赤血球容積(MCV), AST/ALT比, BMIおよび性別のみで両者を鑑別するアルコール性肝障害/NAFLD指数(ANI)を提唱した. ANIは0を超えるスコアでは数値が高いほどアルコール性肝障害の可能性が高く, 0未満では数値が低いほどNAFLDの可能性が高くなるよう設計されている. 【方法】対象は2006年8月から2012年2月に当科でNAFLDもしくはアルコール性肝障害と診断され, かつ飲酒量を算出可能な213名. ANIはANI = -58.5 + 0.637(MCV)+3.91(AST/ALT)-0.406(BMI)+6.35 for male genderにて算出した. 飲酒量が1日20g以上の患者をアルコール性肝障害と定義した. 【成績】臨床背景は年齢; 55.7±14.1歳, 性別; 男性:女性=103: 110, BMI; 26.2±4.3 kg/m2, ALT; 7-476(中央値 67) IU/L, 血小板; 20.7±7.3 万/mm3, 飲酒量; 0-156.5 g/日, ANI; -16.1-23.1(中央値 -2.8). アルコール性肝障害の拾い上げにおけるANIのROC曲線下面積は0.67. 至適カットオフ値による感度, 特異度, 陽性的中率, および陰性的中率は49%/ 86%/ 49%/ 86%だった. ANI<-5.04の78症例中72例 (92.3%)がNAFLDで, ANI>8.95の10例中8例(80%)がアルコール性肝障害だった. この10例の飲酒量は0-156g/日 (中央値72g)だった. 飲酒量を20g未満(A群), 20-40g(B群), 40g以上(C群)の3群にわけると, ANIはA群: -4.8±6.0, B群: 1.4±5.0, C群: 3.0±7.9と飲酒量の増加に従い有意に上昇したが, ANIの構成要素であるMCV, AST/ALT比およびBMIは同様の傾向を認めなかった. 【考案】ANI高値例は高い確率でアルコール性肝障害を拾い上げることが可能であった. 【結語】ANIはNAFLDとアルコール性肝障害の鑑別に有用である.
索引用語 NAFLD, ANI