セッション情報 ワークショップ13(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

高齢者上部消化管出血における止血治療戦略-静脈瘤を除く

タイトル 内W13-3:

超高齢者の上部消化管出血に対する内視鏡治療の検討

演者 岡田 雄介(京都第二赤十字病院・消化器科)
共同演者 河村 卓二(京都第二赤十字病院・消化器科), 安田 健治朗(京都第二赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】当院における超高齢者の上部消化管出血に対する内視鏡治療の現況について検討した。【対象と方法】2006年1月から2012年2月までの期間に当院で内視鏡的止血処置を要した上部消化管出血369例を対象とした。そのうち80歳以上の82例をA群とし、80歳未満の285例をB群とし、内服歴、抗H.pylori抗体(以下HP抗体)、American Society of Anesthesiologists Physical Status(以下ASA-PS)、Shock Index、出血形式(Forrest分類)、内視鏡的止血成功率、再出血率、輸血の有無、合併症、死亡率に関して両群で比較検討した。A群/B群の平均年齢は85歳(80-93歳)/63歳(16-79歳)、男女比は36:46/68:217であった。【結果】疾患の内訳は、A群は胃潰瘍52例(63%)、十二指腸潰瘍16例(20%)、胃癌5例(6%)、その他9例(11%)、B群は胃潰瘍189例(66%)、十二指腸潰瘍50例(18%)、胃癌21例(7%)、その他25例(9%)であった。A群/B群で抗血小板薬、抗凝固薬及びNSAIDsの内服は47例(57%)/84例(29%)、HP抗体についてはA群では検査しえた46例中16例(35%)、B群では218例中164例(76%)が陽性であった。ASA-PS III以上は35例(43%)/56例(20%)で、Shock Indexが中等症以上は14例(17%)/56例(20%)であった。出血形式(Forrest分類)I:IIは41:41/138:147で、内視鏡的止血成功率は99%/97%、止血成功例のうち再出血率は16%/8.6%であった。輸血を行ったのは54例(66%)/126例(44%)であった。術後脳梗塞や肺炎などの合併症は2例(2%)/7例(2%)、止血不能による死亡は1例(1%)/3例(1%)、出血が契機となり他疾患による1ヶ月以内の死亡は1例(1%)/2例(0.7%)であった。【結語】超高齢者では抗血小板薬、抗凝固薬、NSAIDsを内服している症例が多く、HP抗体は陰性である割合が多かった。また超高齢者は基礎疾患を有しており全身状態は悪い例が多く、輸血を行った症例も多かったが、内視鏡的止血成功率、再出血率、合併症率、死亡率に有意差は見られなかった。超高齢者においても上部消化管出血に対する内視鏡治療は積極的にすべきと考えるが、慎重な全身管理が必要である。
索引用語 上部消化管出血, 内視鏡的止血術