セッション情報 シンポジウム4(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

胃がん検診の理想的な住み分け:新しい検診方式を目指して

タイトル 検S4-8:

超高齢地域における新たなABC分類を用いた胃がん検診システムの実践-有用性と課題-

演者 井上 和彦(川崎医大・総合臨床医学)
共同演者 近藤 秀則(近藤病院(岡山)), 春間 賢(川崎医大・消化管内科)
抄録 胃がん発生にはHelicobacter pylori(Hp)感染が必要条件であり、その中で高度胃粘膜萎縮と高度胃粘膜炎症は高危険群と考えられる。従来のABC分類にB群の細分類(B-1群:ペプシノゲン(PG)II<30ng/ml、B-2群:PGII≧30ng/mL)を加えた新たなABC分類を基盤とした胃がん検診システムを高齢化率が極めて高い地域検診に導入したので、その取り組みを報告する。【対象と方法】2011年4月から2012年1月の期間に1228名(男性469名、女性759名、24-95歳、平均67.9歳)が受診し、60歳以上が78.6%を占めていた。PG法陽性のC群とB-2群には内視鏡を勧奨し、B-1群に対しては胃X-pを勧めた。A群に対しては基本的には5年後のABC分類とした。ABC分類結果ならびに画像検査結果はすべて各医療機関から行政に報告し、画像検査未受診者には行政から再度受診勧奨することとし、さらに、翌年度以降の画像検査の勧奨も行政で行う管理システムとした。【結果および結論】各群の占める割合はA群603名(49.1%)、B-1群161名(13.1%)、B-2群98名(8.0%)、C群366名(29.8%)であり、高齢化率が極めて高い地域においても概ねHp未感染と考えられるA群が約半数を占めており、画像検査への対象集約に有用と考えられた。しかし、内視鏡を必要とする受診者が37.8%あり、内視鏡のマンパワーの確保と精度管理が必須と考えられた。また、Hp既感染の可能性が否定できないPGI/II比<4.0の例がA群の中で12.8%(77例)あり、その扱いも今後の課題と考えられた。ABC分類の地域検診への導入には保健師をはじめとする行政の協力とともに住民の理解も必要である。住民に正しく理解してもらうため市民公開講座などで啓発活動を行い、さらに、医療でも活用できるように胃の健康手帳(血清Hp抗体価・血清PG値・ABC分類、内視鏡あるいはX-p検査結果、除菌治療・除菌判定などを記載)を作成しており、その取り組みを含め報告する。
索引用語 ABC分類, 地域検診