セッション情報 ワークショップ13(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

高齢者上部消化管出血における止血治療戦略-静脈瘤を除く

タイトル 内W13-4:

高齢者における上部消化管出血に対する緊急内視鏡検査の現状と内視鏡的止血および止血術後再出血の予測因子に関する検討

演者 村元 喬(昭和大・消化器内科)
共同演者 小西 一男(昭和大・消化器内科), 井廻 道夫(昭和大・消化器内科)
抄録 【目的】高齢者における上部消化管出血に対する緊急内視鏡検査の現状と内視鏡的止血および止血術後再出血の予測因子についてretrospectiveに比較検討した。
【方法】過去3年6ヶ月の間に消化管出血が疑われ施行された緊急上部消化管内視鏡検査612例を対象とした(食道胃静脈瘤出血例を除く)。65歳以上の高齢者(386例)と64歳以下の非高齢者(226例)の2群に分類し、患者背景、治療成績(一次止血率、再出血率)について検討した(検討1)。次に高齢者症例について内視鏡的止血術を要した182例(止血群)と観察のみ(観察群)の204例の2群に分けて内視鏡的止血術適応に関する予測因子 (検討2)、さらに術後再出血予測因子についても検討した(検討3)。検討2でGlasgow-blatchford bleeding score (GBS)、検討3でForrest分類・内視鏡的止血法の種類を検討項目に加えた。
【成績】高齢者では非高齢者と比較して女性、抗凝固剤・NSAIDs内服歴が有意に多く、平均在院日数も高齢者で有意に長かった。しかし、止血術施行症例では、一次止血率と再出血率について両群間に有意差は認められなかった。次に高齢者の止血群では、観察群に比べNSAIDs内服歴を有する症例が多く、GBSが有意に高かった(13.1 vs 11.4, P < 0.01)。さらに、高齢者の術後再出血は12% (21/182)で認められ、再出血の予測因子についてForrest分類Ia及びIbの頻度は、完全止血例に比べ再出血例で有意に高かった (31%, 51/166 vs. 62%, 13/21; P < 0.01)。止血法としての薬剤局注療法、高周波凝固術、クリップ法の使用頻度は単独治療、併用治療を含めて両群間で有意差を認めなかった。
【結論】上部消化管出血に対する内視鏡治療成績について高齢者と非高齢者間で有意差は認められなかった。また、患者の全身状態、血液検査所見を反映するGBSは内視鏡的止血術の適応、Forrest分類Ia-bは術後再出血の予測因子となりうることが推定された。
索引用語 高齢者, 消化管出血