セッション情報 ワークショップ13(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

高齢者上部消化管出血における止血治療戦略-静脈瘤を除く

タイトル 消W13-5:

高齢者出血性潰瘍の特徴および再出血危険因子の臨床的検討

演者 林 智之(石川県立中央病院・消化器内科)
共同演者 竹村 健一(石川県立中央病院・消化器内科), 土山 寿志(石川県立中央病院・消化器内科)
抄録 【目的】高齢者出血性潰瘍の特徴と治療後の再出血の危険因子を検討する。【方法】2000年1月~2012年2月まで出血性潰瘍にて内視鏡治療を行った513症例を対象とした。70歳以上の高齢者群と70歳未満の非高齢者群の2群に分類し、両群間の患者背景、内視鏡所見、治療成績を比較検討した。また高齢者群において、再出血の危険因子を検討した。検討する因子として、患者背景、内服薬、Hp感染、潰瘍既往歴、基礎疾患、喫煙歴、飲酒歴、ショック、輸血、Hb、潰瘍の特徴(部位、径、崎田分類、Forrest分類、数)、止血法を用いた。【成績】高齢者群168例(32.7%)、非高齢者群345例(67.3%)であった。高齢者群で、患者背景として女性が多く、潰瘍の既往を有する例は少なく、基礎疾患を有する例が多かった。ショックの割合は有意差を認めなかったが、高齢者群でHbが低値で輸血率が高かった。高齢者群で喫煙率、飲酒率は低率であった。高齢者群で出血時のNSAID、抗血小板薬、抗凝固薬、ステロイド内服率はいずれも高率だったが、PPIやH2RA内服率、Hp感染率は有意差を認めなかった。内視鏡所見として、高齢者群では胃上部病変が多く十二指腸病変が少なかったが、潰瘍の特徴はいずれの項目も有意差を認めなかった。治療法は大部分がクリップ法と凝固法であったが、割合に有意差を認めなかった。高齢者群で術前の鎮静薬投与量は少なかった。高齢者群は入院中の出血発症率が高く、緊急入院例の在院日数は長かったが、追加止血率、再出血率、手術/IVR移行率、死亡率に有意差を認めなかった。また、高齢者再出血の有意な危険因子は認めなかったが、クリップ法は凝固法に比べ再出血率が高い傾向がみられた。【結論】高齢者はNSAID、抗血小板薬、抗凝固薬、ステロイド内服率が高く、基礎疾患合併率、輸血率が高く入院日数も長いものの、追加止血率、再出血率、手術/IVR移行率、死亡率は非高齢者と差を認めないことから、高齢者出血性潰瘍の特徴を十分に把握した上で適切な処置を行えば、非高齢者と同様の治療成績となりうることが示された。
索引用語 高齢者, 出血性潰瘍