セッション情報 |
ワークショップ13(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)
高齢者上部消化管出血における止血治療戦略-静脈瘤を除く
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タイトル |
内W13-6:高齢者における出血性胃潰瘍の特徴と治療的アプローチ
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演者 |
樋口 徹(佐賀大附属病院・消化器内科) |
共同演者 |
山口 太輔(佐賀大附属病院・消化器内科), 岩切 龍一(佐賀大附属病院・光学医療診療部) |
抄録 |
【目的】高齢者人口の増加に伴い、様々な基礎疾患を有する高齢者出血性胃潰瘍患者が増加している。今回は佐賀大学医学部附属病院において経験した出血性胃潰瘍症例を対象に、高齢者における出血性胃潰瘍の特徴とその治療法について検討した。【対象】1999年1月1日より2011年12月31日の13年間に当院にて緊急内視鏡検査で内視鏡的止血術を施行した胃潰瘍患者461例を対象に検討した。【結果】内訳は男性327名、女性134名で、平均年齢は62.9歳、65歳以上の高齢者は231名であり、64歳以下の若年者は230名であった。また前期(1999-2005年)の患者は225名、後期(2006-2011年)は236名であり、高齢者の出血性胃潰瘍患者の割合は後期で増加していた(前期:100名→後期:131名 p=0.020)。高齢者は基礎疾患を有する患者が多く(若年者:108名、高齢者:184名 p<0.05)、アスピリンなど抗血小板薬を内服している患者が多かった(若年者:20名、高齢者41名 p=0.026)。高齢者の出血性胃潰瘍患者の方が入院時のHb値は低値で重篤な症例が多く(若年者:9.22g/dl、高齢者:8.46g/dl p=0.045)、入院期間が長いという特徴があった(若年者:18.1日、高齢者:22.6日 p=0.017)。いずれの症例も緊急内視鏡検査を来院後(発症後)5時間以内に施行しており、内視鏡的止血処置は前期ではクリップを使用することが多く、後期ではソフト凝固による止血処置が増加した。前期と後期、クリップ止血とソフト凝固での止血処置における再出血率には有意差はなかった。再出血率、輸血量、1ヵ月以内死亡率は高齢者と若年者に有意差はなかった。【結語】高齢者の出血性胃潰瘍の割合は増加しており、その原因はピロリ菌感染から抗血小板薬や抗凝固薬等服用による薬剤起因潰瘍にかわりつつある。今回の結果は、高齢者の出血性胃潰瘍患者は入院時Hb値が低く重篤な状態で搬送されることも少なくないが、内視鏡的止血処置を中心とする治療を迅速に適切に行えば、若年者同様に安全に治療を行うことが可能であることを示している。 |
索引用語 |
高齢者, 出血性胃潰瘍 |