セッション情報 ワークショップ13(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

高齢者上部消化管出血における止血治療戦略-静脈瘤を除く

タイトル 消W13-7:

出血性胃十二指腸潰瘍における高齢者症例と非高齢者症例の比較検討

演者 川崎 啓祐(松山赤十字病院・胃腸センター(消化器科))
共同演者 蔵原 晃一(松山赤十字病院・胃腸センター(消化器科)), 岡本 康治(松山赤十字病院・胃腸センター(消化器科))
抄録 【目的】出血性胃十二指腸潰瘍における高齢者症例の臨床的特徴を明らかにすること【方法】最近10年2か月間に当センターで内視鏡的止血術を施行した出血性胃十二指腸潰瘍616例を対象とし65歳以上を高齢者群に、64歳以下を非高齢者群に分類し各々の臨床像を遡及的に比較検討した。当センターでは来院当日に緊急内視鏡検査を施行しForrest分類に基づいてタイピングを行いIIa以上に対して内視鏡止血術を施行している。止血術後に一旦絶食管理とするが全例に翌日2nd lookを施行し、再度タイピングを行いIIa以上であれば止血術を追加し、IIb以下なら経口摂取開始としている。特に抗血栓薬はその中止のリスクを考慮して種類を問わず継続としているが、その是非について両群の止血成績を比較検討した。【成績】対象616例は高齢者群366例(59.4%)、非高齢者群250例(40.6%)に分類された。来院時平均Hb値(g/dl)は高齢者群8.4、非高齢者群9.8で、H.pylori(HP)感染率は高齢者群51.6%、非高齢者群80.8%で高齢者群で有意にHb値、HP感染率が低値であった(p<0.01)。併用薬剤の検討では低用量アスピリンを含む抗血栓薬は高齢者群153例(41.8%)/非高齢者群33例(13.2%)で、非アスピリンNSAIDは高齢者群149例(40.7%)/非高齢者群54例(21.6%)で使用され高齢者群で有意に薬剤併用率が高かった(p<0.01)。止血成績を比較すると平均止血回数は高齢者群で有意に多かったが(p<0.05)、再出血率(高齢者群10.6%、非高齢者群8.4%)に差はなく、内視鏡的止血率(高齢者群97.8%、非高齢者群99.6%)にも差を認めなかった。【結論】高齢者症例は非高齢者症例と比較して、来院時平均Hb値が低く、薬剤併用率(抗血栓薬、NSAID使用率)が高く慎重な対応が要求されるが、2nd lookを必須とし再度Forrest分類に基づいてタイピングを行い、追加止血術と摂食開始の指標にすることで抗血栓薬継続下でも非高齢者症例と同等の治療成績が得られ、抗血栓薬使用中止によるリスクを回避できると考えた。
索引用語 出血性胃十二指腸潰瘍, 高齢者