セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年)

タイトル W-13:

顆粒球単球吸着療法により分娩・出産に至り得た、ステロイド依存性潰瘍性大腸炎の1例

演者 川村 雄剛(仙台赤十字病院 消化器内科)
共同演者 大森 信弥(仙台赤十字病院 消化器内科), 佐藤 俊裕(仙台赤十字病院 消化器内科), 菅野 厚(仙台赤十字病院 消化器内科)
抄録 【症例】33歳、女性。【現病歴】平成19年より、下痢、血便が出現した。前医を受診し、全大腸炎型の潰瘍性大腸炎(UC)と診断された。ステロイドにより緩解導入するも、その後もステロイドを減量/中止すると血便が再燃し、プレドニゾロン5mg/日以下には減量できない状態が続いていた。平成22年9月に妊娠6週であることが判明した。その後、悪阻がひどく食欲不振となり、UCの治療薬の内服も困難となったこともあり、血便が増悪し、排便前後の腹痛も生じてきた。UCが再燃増悪した妊娠例であるとして、精査加療目的に当院紹介となった。初診時の触診で、右下腹部に圧痛あるも、腹膜刺激症状を認めず。【経過】下部消化管内視鏡検査において、UCの活動性はsevere activeであった。当科入院とし、絶食、点滴による治療を開始した。緩解導入療法について本人と相談したところ、妊娠中であることも考慮し、非薬物療法である顆粒球単球吸着療法(GMA) を選択した。Intensive(週2回)法の施行2回目以降、血便が消失し、食事摂取も可となった。妊娠20週の時点で退院後、外来通院も含めてのGMAを計10回施行し、その後は血便や腹痛なく経過した。妊娠40週目で正常分娩により出産した。児の体重は2636g、APGAR scoreは8/9点。先天奇形もなく出生となった。【考按】医学中央雑誌も利用し、過去30年間で、GMAを施行したUC妊娠例の報告を検索したところ、自験例を含めて8例検索し得た。全8例とも、GMAによる副作用を認めず、緩解導入に至っていた。その中でステロイド抵抗性/依存性症例は自験例を含めて2例のみであった。【結語】ステロイドを離脱できない状態において妊娠となり、症状が増悪したUC症例ではあったが、ステロイドを増量することなく、機を逸すことなく、intensive GMAにより、臨床的緩解導入および出産に至らし得た。今後、より多くの症例の検討により、妊娠中の活動性UC症例に対するGMAが、併用治療薬の内服用量の減少、母児への副作用の軽減、より不安の少ない妊娠や授乳に繋がるものと期待される。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 妊娠