セッション情報 一般演題

タイトル O-92:

内視鏡的膵管造影にて損傷部位が同定された外傷性膵損傷の1例

演者 小玉 祐(岩手県立中央病院 消化器科)
共同演者 池端 敦(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 健一(岩手県立中央病院 消化器科), 三浦 真奈美(岩手県立中央病院 消化器科), 西牧 宏泰(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 健太(岩手県立中央病院 消化器科), 大浦 翔子(岩手県立中央病院 消化器科), 横山 直信(岩手県立中央病院 消化器科), 大方 英樹(岩手県立中央病院 消化器科), 松本 信(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 太郎(岩手県立中央病院 消化器科), 金澤 義丈(岩手県立中央病院 消化器科), 小原 範之(岩手県立中央病院 消化器科), 城戸 治(岩手県立中央病院 消化器科), 臼田 昌弘(岩手県立中央病院 消化器外科), 小野 貞英(岩手県立中央病院 病理診断科), 村上 晶彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 天野 良彦(岩手県立中央病院 内視鏡科)
抄録 外傷性膵損傷は腹部外傷の中で4-15%を占める比較的まれな外傷である.膵損傷全体の死亡率は12.9%であり,予後を決定する最大の要因は主膵管損傷の有無である.今回,内視鏡的膵管造影(ERP)にて損傷部位が同定された1例を経験したので報告する.【症例】20歳代,男性.主訴:上腹部痛,嘔吐.家族歴・既往歴:特になし.現病歴:受診前夜に大量の飲酒をし,翌朝上腹部痛と頻回の嘔吐がみられ当院を受診した. US(FAST)で肝腎境界にecho free spaceがみられ,緊急CTにて脳挫傷,右腎損傷,膵損傷が疑われ入院となった.現症:身長169cm,体重60kg,血圧112/64mmHg,体温36.5℃,脈拍103/分.意識清明.貧血や黄疸なく,右季肋部に自発痛,圧痛がみられた.血液検査では白血球上昇,肝機能異常,高アミラーゼ血症がみられた.翌日の造影CTでは膵体部で造影不良域があり,膵周囲に液体貯留,周囲脂肪織の濃度上昇がみられた.右後腎傍腔にも液体の貯留がみられた.ERPでは乳頭部から血液の混じった膵液または胆汁の流出がみられた.主膵管は体部で途絶し造影剤の漏出がみられた. ERP,CTより膵損傷分類2008(日本外傷学会)のIIIb型膵体部損傷と診断し開腹術が施行された.術中所見は膵体部で膵挫傷がみられ,横行結腸間膜や後腹膜全体にかけて膵炎による著明な浮腫がみられた.術中胆管造影では総胆管に異常はみられなかった.膵体部で分節切除が施行され,残存膵頭の断端は閉鎖し膵体尾部空腸吻合術(Letton-Willson法)が施行された.手術5日後より食事が開始され良好に経過した.【考察】ERPは膵管の断裂,造影剤の管外漏出,閉塞,拡張などの有無と部位をかなり正確に診断でき,その有用性は高い.受傷後早期のERPに対しては侵襲性や合併症などの問題もあるが,他の検査では主膵管損傷の診断は困難であり,施行可能な施設であればERPは積極的に行うべき検査法のひとつと考えられる.【結語】損傷部位の同定に内視鏡的膵管造影が有用であり,緊急手術により救命された外傷性膵損傷の1例を経験した.
索引用語 外傷性膵損傷, 内視鏡的膵管造影