セッション情報 一般演題

タイトル O-08:

拡張型心筋症を呈した潰瘍性大腸炎の1例

演者 大浦 翔子(岩手県立中央病院 消化器科)
共同演者 池端 敦(岩手県立中央病院 消化器科), 小玉 祐(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 健一(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 健太(岩手県立中央病院 消化器科), 西牧 宏泰(岩手県立中央病院 消化器科), 横山 直信(岩手県立中央病院 消化器科), 大方 英樹(岩手県立中央病院 消化器科), 松本 信(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 太郎(岩手県立中央病院 消化器科), 三浦 真奈美(岩手県立中央病院 消化器科), 金澤 義丈(岩手県立中央病院 消化器科), 小原 範之(岩手県立中央病院 消化器科), 城戸 治(岩手県立中央病院 消化器科), 村上 晶彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 天野 良彦(岩手県立中央病院 内視鏡科)
抄録 【症例】40歳代,男性.主訴:血便,下痢.既往歴:10年前,拡張型心筋症.5年前,一過性心房細動.現病歴:ワーファリンを内服中であったが,約1ヵ月前から血便が出現した.5ASA製剤の投与を受けたが症状が改善しないため当科を受診した.受診時は血便10行/日,腹痛あり.現症:BP102/58,HR97,体温39.2度.貧血なく下腹部に圧痛あり.血液検査ではWBC14100, CRP17.5, ESR87/1hrと炎症反応がみられた.PT-INRは2.22であった.心電図ではV1の深いSとV5の高いRがみられ左室高電位の所見であった.心エコーでは左室腔の拡大と左室壁運動の低下がみられた.内視鏡にてS状結腸までの観察では粘膜浮腫,びらん,血管透見像の消失がみられた.CTでは直腸から下行結腸の壁肥厚,右半結腸の拡張がみられた.便培養は常在菌のみであった.潰瘍性大腸炎重症型と診断し絶食,補液,ステロイドによる治療を開始した.1週間後に大量出血によりショック状態となったが,PT-INR>7.57と高値であった.ワーファリンを中止し,ビタミンK2の補充,新鮮凍結血漿やMAPの輸血を施行した.循環動態が安定した後はヘパリンに置換し,中心静脈栄養,タクロリムスの内服を開始した.その後血便,腹痛の症状は軽快し,タクロリムス濃度が一定してからは症状の改善がみられた.1ヵ月後の内視鏡検査では下行結腸に潰瘍がみられたが再生上皮で被われ,血管透見像はほぼ回復していた.食事再開後も症状の再燃なく順調に経過した.現在外来でタクロリムスを継続している.【考察】潰瘍性大腸炎はその成因,病態に免疫異常の関与が示唆され,経過中に様々な腸管外合併症がみられる.医中誌の検索では,潰瘍性大腸炎と拡張型心筋症の合併は本邦で過去に1例の報告がみられるのみである.いずれも心筋症が先行していた.壁在血栓や不整脈のため抗凝固剤が使われることが多いが,活動期には大量出血に注意が必要である. 【結語】腸管外合併症としては極めて稀な拡張型心筋症を合併した潰瘍性大腸炎の一例を経験した.
索引用語 潰瘍性大腸炎, 拡張型心筋症