セッション情報 一般演題

タイトル O-10:

肛門管癌を合併した小腸大腸型クローン病の1例

演者 永塚 真(岩手県立中央病院 消化器科)
共同演者 池端 敦(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 健一(岩手県立中央病院 消化器科), 大浦 翔子(岩手県立中央病院 消化器科), 西牧 宏泰(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 健太(岩手県立中央病院 消化器科), 横山 直信(岩手県立中央病院 消化器科), 大方 英樹(岩手県立中央病院 消化器科), 松本 信(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 太郎(岩手県立中央病院 消化器科), 三浦 真奈美(岩手県立中央病院 消化器科), 金澤 義丈(岩手県立中央病院 消化器科), 小原 範之(岩手県立中央病院 消化器科), 城戸 治(岩手県立中央病院 消化器科), 望月 泉(岩手県立中央病院 消化器外科), 小野 貞英(岩手県立中央病院 病理診断科), 村上 晶彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 天野 良彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 福田 耕二(岩手県立中央病院 がん化学療法科), 加藤 誠之(岩手県立中央病院 がん化学療法科)
抄録 【症例】40歳代,男性.主訴:腹部膨満,排便困難.家族歴:特になし.既往歴:特になし.現病歴:20歳代に水様下痢,腹痛で当科を受診し小腸大腸型クローン病と診断された.発症1年後に腸管狭窄のため回盲部腸切除術が施行されたが,吻合部の再発狭窄を繰り返し,発症後3年,4年,6年,7年に腸切除術が施行された.発症7年後以降は免疫調節剤が投与され,吻合部の再発はみられず順調に経過した.発症10年後に難治性痔瘻,肛門周囲膿瘍に対してSeton法が施行され,インフリキシマブを3回投与された.その後は5ASA製剤,免疫調節剤,在宅経腸栄養による外来治療で緩解が維持されていたが,痔瘻からの排膿は続いていた.発症18年後,食欲不振,体重減少がみられ,さらに1週間前から腹部膨満,排便困難な状態となり入院となった.現症:身長165cm,体重50kg,体温37.6度,BP120/80,HR96.血液検査では炎症所見はみられなかったが,腫瘍マーカーはCEA9.2,CA19-9 1161と高値であった.腹部X線,CTでは直腸,結腸の拡張と消化管ガスが著明であった.前処置なしの大腸内視鏡検査では,肛門部は硬くスコープ挿入時に疼痛がみられた.直腸Rbに痔瘻の開口部があり直腸より近位側には炎症所見はみられなかった.絶食,中心静脈栄養のうえ経肛門的イレウスチューブにて腸内減圧が施行された.以上の所見から直腸肛門管癌が強く疑われ直腸切断,人工肛門造設術が施行された.組織学的には主として肛門に腺癌がみられ,直腸の粘膜面の一部にも腺癌がみられた.また,浸潤部の癌巣周囲に炎症性細胞浸潤がみられた.病理診断は高分化腺癌(肛門管),ly1,v1,pPM0,pDM0,RM1,n(-)であった.術後は5FUを用いた化学放射線療法が施行され,現在外来で化学療法が継続されている.CT上,再発転移はみられず,腫瘍マーカーは正常範囲内である.【結語】肛門管癌の診断に苦慮したクローン病の一例を経験した.難治性の肛門部病変を有するクローン病の長期経過例では癌の合併を考慮した厳重な経過観察が必要である.
索引用語 クローン病, 肛門管癌