セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年)

タイトル W-12:

下部消化管出血症例における造影CT検査の有用性の検討

演者 高橋 健一(岩手県立中央病院 消化器科)
共同演者 池端 敦(岩手県立中央病院 消化器科), 大方 英樹(岩手県立中央病院 消化器科), 横山 直信(岩手県立中央病院 消化器科), 松本 信(岩手県立中央病院 消化器科), 高橋 太郎(岩手県立中央病院 消化器科), 三浦 真奈美(岩手県立中央病院 消化器科), 金澤 義丈(岩手県立中央病院 消化器科), 小原 範之(岩手県立中央病院 消化器科), 城戸 治(岩手県立中央病院 消化器科), 村上 晶彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 天野 良彦(岩手県立中央病院 内視鏡科)
抄録 【目的】CT検査は病変腸管の部位と範囲を連続的に捉えることができ出血源の検索に有用と考えられる.当科で経験した下部消化管出血症例において造影CT検査の有用性について検討した.【方法】過去2年間に緊急大腸内視鏡検査が施行された下部消化管出血症例217例(236件)のなかで,内視鏡前に緊急造影CT検査が施行された123例129件を対象とした.年齢,性別,原因疾患,CT所見,経過,予後について検討した.【結果】年齢は中央値73歳(19-93歳),男性62例,女性61例であった.原因疾患は憩室出血39例45件,虚血性腸炎34例,大腸癌10例,潰瘍性大腸炎10例,急性出血性直腸潰瘍6例,細菌性腸炎6例,小腸出血5例,その他4例,出血源不明 9例であった.内視鏡的止血術の適応となる疾患で有所見率みると,憩室出血で31件(68.9%),直腸潰瘍で2例(33.3%),angiodysplasiaでは0%であった.その中で造影剤漏出像は8件にみられ,出血源の同定に有用であった.憩室出血の2例に血管塞栓術,2例に手術が施行され,直腸潰瘍の1例にクリップによる止血,1例に結紮術が施行された.内視鏡的止血術の適応とならない疾患では,虚血性腸炎が22例(64.7%),細菌性腸炎が5例(83.3%),潰瘍性大腸炎が8例(80%)で,連続した腸管壁の肥厚所見が得られた.小腸出血では3例(60%)に所見がみられ,1例で手術が施行された.大腸癌では8例(80%)に所見がみられた.【考察】CTは下部消化管出血の診断,出血源検索に有用な検査である.造影剤漏出像などの直接所見がみられる場合は,内視鏡的止血術,血管塞栓術,手術などの治療が必要になる可能性が高く治療選択のうえで重要である.連続した腸管壁の肥厚が捉えられる場合は内視鏡的止血術の適応は少なく,受療直後の緊急内視鏡検査は避けることが可能と考えられた.【結語】下部消化管出血の診断,治療にとって造影CTは有用な検査である.造影剤アレルギーや腎障害などで検査不能の場合以外は積極的に造影CT検査の施行を考慮すべきである.
索引用語 下部消化管出血, 造影CT検査