セッション情報 一般演題

タイトル O-03:

慢性腎不全で維持透析中に上行結腸に広範な潰瘍を生じたNSAIDs腸炎の一例

演者 小野寺 基之(山形市立病院 済生館 消化器内科)
共同演者 野村 栄樹(山形市立病院 済生館 消化器内科DELIMITER山形大学医学部附属病院 第二内科), 沖田 啓(山形市立病院 済生館 消化器内科), 名木野 匡(山形市立病院 済生館 消化器内科), 芳賀 弘明(山形市立病院 済生館 消化器内科), 三浦 敦司(山形市立病院 済生館 消化器内科), 黒木 実智雄(山形市立病院 済生館 消化器内科), 菊地 義文(山形市立病院 済生館 消化器内科), 平川 秀紀(山形市立病院 済生館 消化器内科)
抄録 【症例】68歳、男性.【既往歴】43歳時から慢性腎不全のため透析導入,60歳時 続発性副甲状腺機能亢進症のため副甲状腺摘出術,61歳時 閉塞性動脈硬化症,64歳時 右腎細胞癌のため右腎摘出術.心房細動のためワルファリンカリウムを内服中.【現病歴】H24.4月より腰椎神経根症に起因する下肢痛が強くなり,ロキソプロフェンナトリウム水和物60-180mg/日を常用していた.7.24に黒色便を主訴に当科外来受診.緊急上部内視鏡検査で軽度の十二指腸炎を認めたが,明らかな出血源は特定できず,血液検査所見上,貧血の進行も認めなかった.7.26に下部内視鏡検査を施行したところ,盲腸から上行結腸外側にかけて1/2周性の厚い白苔に覆われた不整形の潰瘍を認めた.その後,腹痛を主訴に再診し,造影CT検査にて上行結腸に腸管壁肥厚及び周囲脂肪織濃度上昇を認めた.虚血性腸炎や感染性腸炎も鑑別に挙がったが,連日NSAIDsを内服していた既往から,NSAIDs腸炎の可能性を考え,4週間休薬後の8.23に下部内視鏡検査を再検した.前回認めた潰瘍は改善傾向にあり,生検では好酸球の浸潤やアポトシーシス小体を認めた.便や生検組織の培養検査が陰性であり,NSAIDsの使用中止により病変が治癒したことから,NSAIDs腸炎が考えられた.現在NSAIDsは中止し,プレガバリン内服にて,疼痛コントロールは良好である.【考察】維持透析患者は心血管系イベントのリスクが高く,多数の薬剤が投与されていることが多い.中でもNSAIDsは解熱・鎮痛目的に一般的に処方され,近年高齢化社会に伴い,関節炎などの整形外科的領域を中心に処方量は増加し続けている.NSAIDsの上部消化管における副作用は古くから知られているが,近年になり下部消化管にも潰瘍や出血,狭窄といった傷害が起こることが報告されるようになってきた.今回我々は維持透析中に上行結腸に広範な潰瘍を生じたNSAIDs腸炎を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 NSAIDs腸炎, 潰瘍