セッション情報 特別企画 初期研修医(卒後2年迄)

タイトル W-09:

集学的治療が奏功し、発症後2年でCRがえられた肝静脈浸潤を伴う肝両葉多発肝細胞癌の一例

演者 松澤 尚徳(秋田大学 医学部 消化器内科)
共同演者 佐藤 亘(秋田大学 医学部 消化器内科), 後藤 隆(秋田大学 医学部 消化器内科), 三浦 光一(秋田大学 医学部 消化器内科), 大嶋 重敏(秋田大学 医学部 消化器内科), 澁谷 友美(秋田大学 医学部 消化器内科), 道免 孝洋(秋田大学 医学部 消化器内科), 鎌田 健太郎(秋田大学 医学部 消化器内科), 金田 遼(秋田大学 医学部 消化器内科), 酒井 利隆(秋田大学 医学部 消化器内科), 千葉 充(秋田大学 医学部 消化器内科), 杉本 侑孝(秋田大学 医学部 消化器内科), 南 慎一郎(秋田大学 医学部 消化器内科), 大西 洋英(秋田大学 医学部 消化器内科)
抄録 【症例】48歳男性 【現病歴】B型慢性肝炎の診断で近医にてエンテカビル服用中。2009年6月よりAFPの上昇あり、7月に腹部超音波検査で肝S4に4.3×3cm大の腫瘍を認め、CT上も同部位にearly enhancementと平衡相でのwash outを認め、肝細胞癌の診断で加療目的に当科に入院した。【臨床経過】血液検査では、AFP 242ng/ml, PIVKA-2 1098mAU/mlと著明な上昇を認めた。肝予備能はChild-pugh score 5点、肝障害度Aと良好であった。当院で施行した腹部造影CTではS1からS4へのびるように5cm大の肝細胞癌を認め、中肝静脈への浸潤を認めた。更に肝両葉に多発する早期濃染をともなう小結節も認め肝内転移と考えられた。EOB-MRI肝細胞相では同部に陰影欠損を認めた。画像上、肝静脈浸潤をともなう肝両葉多発肝細胞癌と診断。治療はIA-callにてTACEを施行した。主腫瘍に対するTACEの治療効果は良好であったが、多発する肝内転移は腫瘍径も小さく、選択的なTACEが不可であり残存が疑われたため、TACEによる一時的な肝予備能低下からの回復をまって、sorafenib 800mgの内服加療を開始した。経過中、grade3の手足症候群が出現し、400mgまで減量した。10月のCTでは、主腫瘍に対するリピオドール貯留は良好、一部の肝内転移はsorafenibの効果と思われる腫瘍の壊死を認めるものの、早期濃染を有する腫瘍が残存しており、TACEを再施行。以降、TACE+sorafenib交替療法を施行する方針とした。2011年4月までTACEを計5回施行。TACE-TACE間はsorafenib 400mg服用した。2011年4月のCTでは、肝内に残存腫瘍を認めないものの、右肺中葉に10mm大の肺転移を認め、5月に右肺部分切除術施行。病理所見は中分化型の肝細胞癌であった。その後、肝・肺とも再発を認めず、2012年6月まsorafenib 400mg服用、1年間、再発を認めなかったためsorafenib内服を中止した。以降2012年10月まで再発を認めず、腫瘍マーカーも正常化している。【結語】集学的加療が奏功したし、CRがえられた脈管浸潤を伴う肝両葉多発肝細胞癌を経験した。貴重な症例と考えられ報告する。
索引用語 肝細胞癌, ソラフェニブ