抄録 |
【目的】バレット食道は腺癌の発生母地として最近注目されている。今回、バレット食道患者の内視鏡所見を逆流性食道炎との関連性も含めて、長期的に経過観察しえたので報告する。【方法】食道疾患研究会の定義によるバレット食道患者212例を対象とした。LA分類grade A以上の逆流性食道炎を合併する123例(RE群)と合併しない89例(non-RE群)に分類し、両群における観察期間や検査回数、SSBEとLSBEの頻度、SSBEの形状別頻度、SSBEの伸展率、および癌化率について検討した。【成績】平均年齢と男女比はRE群66.3歳、1.46:1、non-RE群68.2歳、1.12:1であり、年齢差はないがRE群の男性比率がより高かった。RE群にはgrade A 49.6%, B 38.8%, C 9.9%, D 1.7%の食道炎を合併し、その48.0%は不変増悪ないし消長を繰り返す難治例だった。観察期間はRE群56.3±24.5月、non-RE群65.9±32.7月、検査回数はRE群3.9±1.4回、non-RE群4.0±1.9回であり、後者の観察期間がやや長かった(P<0.05)。LSBEに関してはRE群1例(0.8%)、non-RE群1例(1.1%)の2例のみだった。SSBEの形状別頻度はRE群で舌型47.2%、火炎型27.6%、ドーム型25.2%、non-RE群ではそれぞれ39.3%、31.5%、29.2%だった。RE群で舌型の頻度が高いものの有意差はなかった。RE群では食道炎の経過中に新たに発生するBEが46例(37.4%)あり、発生まで35.8±24.2月の観察を要した。経過中BEが明らかに進展したのは、RE群8例(6.5%)、non-RE群0例(0.0%)であり、8例中6例(75.0%)はgrade C,Dの重症食道炎に合併した。食道炎を伴わないBEでは進展しなかった。BEの癌化は経過観察中LSBEの1例にのみ認め(0.5%)、食道炎のないnon-RE群だった。肉眼型は0-2a型のsm癌で組織型は中分化型腺癌であり、外科的切除を行った。【結論】バレット食道の長期経過を内視鏡観察したところ、逆流性食道炎を伴うもののみ進展したが、頻度は極めて低率だった。LSBEを2例認めたが発見時からすでにその状態だった。癌化例はLSBEにのみ1例観察され、今回の検討ではSSBEから癌化した例はなかった。 |