セッション情報 シンポジウム「B型肝炎治療の工夫」

タイトル S-12:

生体肝移植後長期おけるB型肝炎対策

演者 川岸 直樹(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科DELIMITER東北大学病院 臓器移植医療部)
共同演者 原 康之(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 中西 史(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 武田 郁央(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 宮城 重人(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 佐藤 和重(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 関口 悟(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 佐藤 成(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 大内 憲明(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科)
抄録 【目的】1991年7月から2012年11月までに当科で行った生体肝移植156例のうち、移植後2年以上経過を追え、移植前慢性B型肝炎であった12症例、HBV初感染による劇症肝炎であった3例、レシピエントがB型肝炎ではないが、HBc抗体陽性ドナーであった3例について検討したので報告する。【方法】B型肝炎、肝硬変の12例は、肝癌6例、肝不全4例、慢性肝炎急性増悪2例であり、C型肝炎合併1例、PBCとの合併1例を含んでいた。HBc抗体陽性ドナーのレシピエントの原疾患は胆道閉鎖症1例、cryptogenic1例、C型肝炎・肝癌1例であった。HBIGは術中から第2病日まで計4万単位投与、その後HBs抗体の抗体価は150mIU/ml以上を維持目標とし、術後1年で終了した。核酸アナログ(ラミブジン(LAM)12例、LAM+アデフォビル(AD)2例、エンテカビル3例)は、移植直後から継続した。HBc抗体陽性ドナーの1例は、HBVの移植後予防治療が確立する以前の症例で、無治療であった。移植後1年以上経過した症例で、免疫抑制剤が1剤のみとなり、肝機能が安定していた3例にHBVワクチンを施行した。平均観察期間は84ヶ月であった。【結果】18例中(予防治療しなかった1例を含む)2例にHBs抗原の陽性化がみられた。無治療の1例は、移植後6年目からLAM投与開始され、10年目からAD投与、現在移植後19年過ぎ、肝機能良好でHBs抗原陰性である。15例は生存中で、1例は肝膿瘍、1例は肝癌の再発(HBV再発例)、1例はHCV再発で死亡した。1例は変異株出現、1例はTMAにより、LAMからエンテカビルへ変更した。ワクチンを施行した3例中1例で一時的にHBs抗体を獲得したが、長期持続はしなかった。【結論】B型肝炎再発予防には、術後1年から核酸アナログ単独でも良好な成績が得られたが、さらなる症例の蓄積が必要であると考えられた。
索引用語 肝移植, HBV