セッション情報 | シンポジウム「B型肝炎治療の工夫」 |
---|---|
タイトル | S-05:当科におけるB型急性肝炎症例の検討 ―どのような症例にエンテカビルを投与すべきか― |
演者 | 藤坂 泰之(みやぎ県南中核病院 消化器内科) |
共同演者 | 三浦 雅人(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 洞口 愛(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 阿曽沼 祥(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 梅村 賢(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 飯岡 佳彦(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 大沼 勝(みやぎ県南中核病院 消化器内科) |
抄録 | 【目的】日本のB型急性肝炎において慢性化率の高いgenotype Aの症例が増加してきていると報告されている。しかし、慢性化あるいは重症化を防ぐためにどのような症例に積極的に抗ウイルス剤を投与すべきかについては決定されていない。今回我々は当科で経験したB型急性肝炎症例の経過からどのような症例にエンテカビル(ETV)を投与すべきかについて検討した。【方法】2009年4月~2012年3月までの3年間に当科で経験したB型急性肝炎6例(男性3例・女性3例)(年齢20歳代5例、50歳代1例)を対象とした。これらの症例をETV非投与例4例(A群)と投与例2例(B群)に分けて、1)入院時の検査成績、2)その後の臨床経過について検討した。【成績】1)入院時のALT値はA群1205~3180(平均2176)U/l、B群1702~2030(平均1866)U/l、PT値はA群72.3~79.0(平均75.8)%、B群58.4~84.1(平均71.3)%と差を認めなかったが、T.Bil値はA群4.40~7.60(平均6.37)mg/dl、B群1.06~3.70(平均2.38)mg/dlとB群で低値であった。ウイルス学的には6例全例HBe抗原陽性、genotypeはA群ではA1例、B1例、C2例であったのに対し、B群は2例ともgenotype Aであった。HBV-DNA量はA群5.4~6.1logcopies/mlであったのに対し、B群ではそれぞれ8.9、>9.1 logcopies/mlと著明に高値であった。2)臨床経過:A群は経過良好にて10~28日の入院期間で退院となった。一方、B群の2例ではALT値の悪化によりそれぞれ第15病日、第9病日にETV投与開始となったが、その後PT値の悪化(36.3%、46.0%)のため大学病院に転院となり、最終的に入院期間は137日と61日と長期間に及んだ。また、HBs抗原陰性化確認までの期間はA群では全例発症150日以内であったが、B群ではETVを8ヶ月にわたり投与した症例では投与中の106日目にHBs抗原陰性を確認したものの、3ヶ月で投与中止した症例では258日目にようやく陰性を確認できた。【まとめ】初診時にT.Bil値が低いなど比較的軽症と思われる検査成績であっても、genotype AでHBV-DNAが著明に高値である症例に対しては早期にエンテカビルの投与を考慮する必要があると考えられた。 |
索引用語 | B型急性肝炎, エンテカビル |