セッション情報 シンポジウム「B型肝炎治療の工夫」

タイトル S-07:

発癌予防目的にエンテカビルを投与したB型慢性肝炎症例の検討

演者 三浦 雅人(みやぎ県南中核病院 消化器内科)
共同演者 藤坂 泰之(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 洞口 愛(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 阿曽沼 祥(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 梅村 賢(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 飯岡 佳彦(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 大沼 勝(みやぎ県南中核病院 消化器内科)
抄録 【目的】B型慢性肝炎ではHBV-DNA量が低値であるほど肝癌の発癌率が低いと報告されている。今回我々は、発癌予防目的にエンテカビルを投与したB型慢性肝炎症例について検討した。【方法】2012年3月末の時点でエンテカビル(ETV)の投与がなされていた35例のうち治療直前のALT値が31~40U/lで、かつ治療ガイドラインのHBV-DNA量の基準を満たした7例(男性4例、女性3例)を対象として、1)背景因子、2)ETV投与後の検査成績の推移、3)治療後の臨床経過について検討した。なお、経過観察期間はETV投与開始後12ヶ月~21ヶ月であった。【成績】1)年齢は44~73(平均56.4)歳。ALT値は34~39(平均35.6)U/l、血小板数10.5~23.1(平均17.0)万/μl。ウイルスマーカーでは、全例HBe抗原陰性でHBV-DNA量は5.2~6.4(平均5.9)logcopies/mlと全例5logcopies/ml以上であった。HBV genotypeはB3例、C3例、D1例であり、genotype Cのうち2例は外国人(中国人、韓国人)であった。2)ALT値はETV投与開始6ヶ月目には7例中5例で30U/l以下に低下したが、そのうちの1例で投与開始9ヶ月目にALT84U/lとbreakthrough hepatitisを発症し、その1ヶ月後にはALT538U/lまで上昇した。ETV投与開始6ヶ月目後のHBV-DNA量はbreakthrough hepatitisを起こした1例で4.6logcopies/mlであったが、3例で2.1未満、3例で検出せずの状態となった。3)breakthrough hepatitisを起こした1例はETV開始10ヶ月目よりアデホビルを併用したところその後HBV-DNAの減少に伴い肝機能は正常化した。また、ETV投与6ヶ月目にHBV-DNAが2.1未満であった3例のうち2例は9ヶ月目にHBV-DNAが検出せずの状態なったが、1例ではその後も検出せずの状態にならずETV投与開始後1年3ヶ月目に肝癌を発症した。【まとめ】1)発癌予防目的にETVを投与したB型慢性肝炎症例7例中5例でHBV-DNAの陰性化と肝機能のさらなる改善が認められた。2)6ヶ月目にHBV-DNAが2.1未満~検出せずの状態にならなかった1例で9ヶ月目にbreakthrough hepatitisを発症した。3)ETV投与開始1年経過してもHBV-DNAが陰性化しない症例などでは特に発癌に注意する必要があると考えられた。
索引用語 B型慢性肝炎, 発癌予防