抄録 |
【目的】総胆管結石の治療において、大結石や積み上げ結石などの治療困難例に対する内視鏡的乳頭ラージバルーン拡張術(Endoscopic papillary large balloon dilatation: EPLBD)の有用性と安全性が報告されている。今回我々は当施設におけるEPLBDを用いた総胆管結石截石術の治療成績を報告する。【対象】H23年11月からH24年10月までの間に当院にて総胆管結石と診断された25例のうち、大結石・積み上げ結石と術前診断された13例を対象とした。男性/女性 8/5例。年齢62~96歳、中央値76歳、80歳以上5例。【方法】術前診断で大結石・積み上げ結石と診断された症例に対し、内視鏡的乳頭切開術(Endoscopic sphincterotomy:EST)小~中切開後、CRE WG(Boston Scientific社製)を用いEPLBDを施行した。バルーンは胆管径に一致するまで拡張を行い、その後バスケット・バルーンカテーテルで採石を行った。術後は全例にENBDチューブを留置した。胆道造影所見、術後の腹部超音波所見で総胆管結石を認めないものを完全排石とし、EPLBDを用いたEMLでの完全排石率、それに伴う合併症について検討した。【結果】傍乳頭憩室又は憩室内乳頭は10例(71%)であった。平均総胆管径は15.3mm(最大31.2mm, 最小11mm), 平均最大結石径14.4mm(最大30.4mm, 最小3mm)、結石数は1個が3例、2個が3例、5個以上が7例であった。EPLBDによる完全排石率は9/13(69%)であった。EPLBDの術後膵炎(アミラーゼが術前の3倍以上に増加し腹痛を伴う)は1/13(7.7%)で、その他、発熱(37.5℃以上)が6/13(46%)、腹部膨満感が3/13(23%)、嘔吐が0/13(0%)であった。【結論】EPLBDを施行することにより、従来の方法で困難だった大結石・積み上げ結石例や、傍乳頭憩室・憩室内乳頭などの症例でも、高い完全排石率が認められ安全で有効な手段であることが示唆された。 |