セッション情報 一般演題

タイトル O-96:

東北大学におけるアルコール肝硬変に対する肝移植

演者 中西 史(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科)
共同演者 川岸 直樹(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科DELIMITER東北大学病院 臓器移植医療部), 関口 悟(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 佐藤 和重(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 宮城 重人(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 武田 郁央(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 阿佐美 健吾(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 神保 琢也(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 原  康之(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 中西 渉(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 佐藤 成(東北大学病院 移植・再建・内視鏡外科), 大内 憲明(東北大学病院 乳腺・内分泌外科)
抄録 【はじめに】アルコール性肝硬変は、禁酒が最も効果的な治療法であるが、肝機能が改善せず肝移植の適応となる事があり、欧米では肝移植の適応疾患の中でも頻度の高い疾患である。本邦では2011年12月までに37施設194名が初回肝移植を受けている。しかし、移植後に再飲酒する問題が指摘されており、脳死肝移植適応評価委員会の適応基準では、6ヶ月以上の断酒期間(原則として飲酒可能な期間であり身体的悪化に伴う入院期間をのぞく)が必須条件となり、当科でもこの基準を移植の条件としている。しかし、以前は6ヶ月の禁酒(身体的悪化の時期を含む)を条件とし、3例のアルコール肝硬変患者に生体肝移植を施行している。
【症例1】56歳、男性。息子をドナーに生体肝移植施行。術前飲酒は36年間、日本酒720ml/日(エタノール換算110g)以上。禁酒期間は7ヶ月、断酒期間は4ヶ月。術後経過は良好であり、39ヶ月間断酒継続できたが、震災後の避難生活を契機に飲酒の再開がみられている。
【症例2】55歳、男性。息子をドナーに生体肝移植施行。術前飲酒は40年間、日本酒900ml/日(エタノール換算140g)以上。禁酒期間は9ヶ月、断酒期間は6ヶ月。門脈血栓あり、手術は困難で、後出血や胆汁漏など合併症にも難渋した。12ヶ月後に飲酒再開みられ、15ヶ月後に膵炎を発症。内科的治療のほか、仮性嚢胞に対して嚢胞胃吻合術も必要となった。
【症例3】44歳、女性。息子をドナーに生体肝移植施行。術前飲酒は約20年、最大飲酒は焼酎ボトル半分/日(エタノール換算90g以上)を4年間。禁酒期間9ヶ月、断酒期間5ヶ月。術後は難治性の胆管炎からグラフト不全に至り、203病日に死亡した。
【結語】3例のアルコール性肝硬変患者に肝移植を施行した。生存例2例ともに再飲酒を認めている。アルコール性肝硬変の移植適応は慎重に検討する必要があり、術前から断酒会への参加など再飲酒防止の取り組みも必要と思われた。
索引用語 アルコール性肝硬変, 肝移植