セッション情報 一般演題

タイトル O-13:

難治性放射線性直腸炎に対しエカベトナトリウムが奏効した一例

演者 塚本 啓祐(宮城県立がんセンター 消化器科)
共同演者 相澤 宏樹(宮城県立がんセンター 消化器科), 内藤 健夫(宮城県立がんセンター 消化器科), 及川 智之(宮城県立がんセンター 消化器科), 虻江 誠(宮城県立がんセンター 消化器科), 内海 潔(宮城県立がんセンター 消化器科), 野口 哲也(宮城県立がんセンター 消化器科), 鈴木 眞一(宮城県立がんセンター 消化器科), 鈴木 雅貴(宮城県立がんセンター 消化器科), 小野寺 博義(宮城県立がんセンター 消化器科), 野村 栄樹(宮城県立がんセンター 消化器科)
抄録 症例は71歳女性。2008年10月IIb期子宮頸癌に対し放射線化学療法(全骨盤外照射30Gy、中央遮蔽全骨盤外照射20Gy、RALS 24Gy、ネダプラチン40mg/日×8)を施行し、翌年1月子宮頸部切除を行った。11月中旬より少量の血便が出現し、同月末、大量の凝血塊の排泄があった為、婦人科より当科紹介となった。大腸内視鏡検査で下部直腸前壁に正常粘膜に覆われた周囲隆起を伴う潰瘍性病変を認め、潰瘍底からは滲出性出血が見られた。出血部位には焼灼を行い止血を得、子宮頸癌の直腸浸潤、癌性腹膜炎、放射線性直腸潰瘍などを疑い入院とした。同部位からの複数回の生検ではいずれもGroup1、婦人科による膣断端擦過細胞診でもclassII、腹部骨盤CT、MRIで癌性腹膜炎を示唆する所見はなく、放射線の晩発期障害による直腸潰瘍と診断した。入院後は出血なく経過し4日後に退院、外来での経過観察としたが、12月と翌2010年1月の内視鏡検査で潰瘍の治癒が認められず、エカベトナトリウム注腸(1.5g+微温湯50ml1日2回)、スクラルファート内服で治療を開始した。悪化は認められないものの、3~4日に1回は血便が少量あるなど劇的な治癒も認められず、難治性であった。今後の治療の選択肢として現在の治療の継続、人工肛門、高圧酸素療法などを提示し、ご本人と討議を重ねた結果、現在の治療に2010年9~10月高圧酸素療法を行った。その後も3~4日に1回は少量の血便があったが、エカベトナトリウム注腸を続けたところ潰瘍に縮小改善傾向を認め、2011年7月の大腸内視鏡検査ではほぼ潰瘍は閉鎖、流水刺激でのみ周囲の拡張した毛細血管から滲出性出血が見られる状態となり、2012年8月には潰瘍は完全に瘢痕化、拡張した周囲毛細血管からも滲出性出血が認められなくなった。現在は時々少量の出血は見られるものの、1日1回のエカベトナトリウム注腸でコントロールでき、外来通院されている。今回我々は放射線照射1年後に発症した難治性放射線性直腸炎をエカベトナトリウムを中心とした集学的治療により2年の歳月を経てコントロールできた一例を経験したため、これを報告する。
索引用語 放射線性直腸炎, エカベトナトリウム