セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年)

タイトル W-17:

縦隔内に進展した膵仮性嚢胞の一例

演者 千葉 宏文(岩手県立中部病院 消化器内科)
共同演者 高橋 秀一郎(岩手県立中部病院 消化器内科), 渡邊 崇(岩手県立中部病院 消化器内科), 伊藤 洋信(岩手県立中部病院 消化器内科), 三上 恵美子(岩手県立中部病院 消化器内科), 佐野 俊和(岩手県立中部病院 消化器内科), 三浦 達也(岩手県立中部病院 消化器内科)
抄録 【症例】38歳男性 【主訴】背部痛、呼吸苦 【既往歴】H12年 大腸クローン病でloopileostomy、 H19年 アルコール性急性膵炎【現病歴】元来大酒家であったがH23年6月のCTで膵石を多数認め、慢性膵炎を指摘されてから禁酒していた。H24年3月から背部痛と呼吸苦あり外来受診。血液検査でAMY 283IU/l、CRP8.17mg/dlと上昇を認め、胸腹部造影CTで食道近傍に低吸収域と大量の左胸水を認めたため精査・加療目的に当科入院した。【現症】体温37.0℃、血圧125/93mmHg、脈拍80bpm、肺音:左減弱【検査所見】胸腹部造影CT:大量の左胸水を認め、膵頭部に26mm大、膵尾部に10mm大の低吸収域あり。膵尾部の低吸収域と連続して食道近傍に被胞化された液体貯留を認めた。膵には多数の石灰化あるが、膵腫大や膵周囲の脂肪織濃度の上昇は認めず、主膵管の拡張も認めなかった。【入院経過】絶食としFOY投与を開始。胸水穿刺施行し、胸水は褐色調でAMYは12927IU/lと高値であった。膵性胸水と判明し、胸腔ドレーン留置すると1000ml程度の排液を認めた。バイタルサインは安定していたが、膵液が縦隔内に流出し破綻した結果、膵性胸水となったものと考え外科的ドレナージ必要と判断。第3病日縦隔内仮性嚢胞に対し左胸腔科鏡下に外科的ドレナージ術施行した。厚い隔壁に覆われた仮性嚢胞を切開したところ暗赤色の液体が流出した。嚢胞の頭側・尾側にドレーンを留置した。排液のAMYは58204IU/lと高値であった。術後ドレーンから40-70ml程度の排液を認めたが、第8病日(POD5)排液が数mlと減少。CTでも縦隔内の仮性嚢胞は著明に縮小した。以後、ドレーンからの排液は認めなかったため第18病日(POD15)ドレーン抜去、第24病日(POD21)のCTでは縦隔内に仮性嚢胞の再発なく、膵尾部の仮性嚢胞も消失し、第29病日(POD26)退院した。その後、8ヶ月後まで再発の所見を認めず、再燃なく外来で経過観察している。【結語】縦隔内膵仮性嚢胞はまれな病態であるが、内科的治療の有効性の報告も散見される。今回われわれは外科的ドレナージにより速やかに嚢胞消失した一例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 縦隔内膵仮性嚢胞, 膵性胸水