セッション情報 一般演題

タイトル O-102:

イレウスを合併し小腸切除術を要した小腸アニサキス症の1例

演者 高橋 祐輝(岩手県立中部病院 消化器内科)
共同演者 渡邊 崇(岩手県立中部病院 消化器内科), 千葉 宏文(岩手県立中部病院 消化器内科), 伊藤 洋信(岩手県立中部病院 消化器内科), 高橋 秀一郎(岩手県立中部病院 消化器内科), 三上 恵美子(岩手県立中部病院 消化器内科), 佐野 俊和(岩手県立中部病院 消化器内科), 三浦 達也(岩手県立中部病院 消化器内科), 上杉 憲幸(岩手医科大学 医学部 病理学講座 分子診断病理学分野)
抄録 【症例】58歳男性【既往歴】高血圧、十二指腸潰瘍【現病歴】平成24年10月、入院当日の朝より上腹部痛があり、市販薬の鎮痙剤使用していた。嘔気強く水分も摂取不可であった。夕方から腹痛増強したために前医救急外来受診した。腹部膨満し上腹部に強い圧痛と筋性防御認め、炎症反応の上昇とイレウス像を認めたため、当科紹介入院となった。【現症】体温36.4℃、脈拍112回/分、血圧137/99mmHg、SpO2 98%。腹部:膨隆、上腹部圧痛・反跳痛・筋性防御あり。【検査結果】(採血)WBC 7940/μL、RBC 488万/μL、Hb 15.6g/dL、Hct 45.0%、Plt 28.5万/μL、CRP 8.59 mg/dl、T-Bil 0.96 mg/dl、AST 17IU/L、ALT 12IU/L、LDH 175IU/L、TP 7.4g/dL、Alb 4.1g/dL、Na 136.3mEq/L、K 4.02 mEq/L、Cl 98.5 mEq/L、BUN 22.0mg/dl、Cr 1.01 mg/dl(Xp)小腸ガス像とniveau形成を認める。(CT)回腸末端と左側腹部空腸に壁肥厚と周囲脂肪組織の濃度上昇認め、中間の小腸の拡張と液体貯留を認める。骨盤底・傍結腸溝に少量の腹水を認める。【入院後経過】腹水認められ、小腸虚血が疑われたため緊急開腹手術施行した。Triez靭帯から90cmの空腸と回腸末端に硬く壁肥厚した部位を認め、この間で特に強く腸管の拡張を認めた。回腸病変は通過障害なかったが空腸病変は完全閉塞しており、空腸病変を切除、端端吻合し手術終了した。術後もイレウス遷延したが、徐々に改善し術後18日目に退院となった。【病理所見】小腸の浮腫性壁肥厚が認められる。粘膜下層を中心としたうっ血と浮腫、壁全層の好中球の混じる炎症細胞浸潤が見られる。粘膜表層にアニサキスとみられる虫体を認め、その周囲で特に炎症が目立ち壁構造が不明瞭である。粘膜層は上皮の立枯れを認め、虚血性変化と考えられる。【結語】小腸アニサキス症は限局性小腸炎の病態を示し、小腸イレウスを呈することがしばしばある。多くは自然に軽快するが、腸の虚血壊死や腹膜炎を合併し手術が必要となることもある。今回小腸アニサキス症により小腸イレウスを発症し、小腸切除術を要した1例を経験したので、文献的考察を加え報告する。
索引用語 アニサキス, イレウス