セッション情報 一般演題

タイトル O-93:

近年5年間の当科における肝疾患関連死の内訳と特殊感染症(Vibrio vulnificus感染症)症例の検討

演者 天野 良彦(岩手県立中央病院 内視鏡科)
共同演者 村上 晶彦(岩手県立中央病院 内視鏡科), 三浦 真奈美(岩手県立中央病院 内視鏡科), 松本 信(岩手県立中央病院 内視鏡科), 森 康記(岩手県立中央病院 皮膚科)
抄録 【はじめに】平成19年度より23年度までの当科での肝疾患関連死症例は112例であった。内訳として癌死は54例、肝硬変死は36例、出血が11例、敗血症が11例であった。特殊症例として今回、Vibrio vulnificus感染症による敗血症で死亡した症例を経験したので報告する。【症例】72歳、男性【既往歴】糖尿病、高血圧【嗜好歴】タバコ:20本/日×50年、アルコール:ビール1000ml/日×40年【経過】上記既往にて近医通院中の患者。X月より倦怠感・発熱・体重減少を認め、4ヶ月後に近医を受診し、CT検査で肝右葉に巨大な腫瘤を認めたため、精査加療目的に当科紹介となる。精査でアルコール性肝障害に伴う肝細胞癌が疑われ、当院消化器外科にて肝右葉切除術が施行された。以降当科で経過観察の方針となっていたが、在宅経過中に食思不振および腹部膨満が出現し、脱力強く、当院救急外来に搬入となる。体温 40.1℃、血圧 69/40 mmHg、脈拍 139回/分、SpO2 90%台(リザーバーマスク10L)、腹部膨満と軽度の圧痛あり。腹部から大腿部にかけての発赤を認めた。敗血症性ショックの状態と考えられ、大量補液とノルアドレナリンの開始となった。入院後、大腿部の発赤は紫色に色調変化し、壊死性の表皮脱落と水疱形成を伴ってきたため、壊死性筋膜炎を疑い当院皮膚科に紹介したが、全身状態不良であり、デブリードメントの適応とは成り得なかった。徐々に全身状態は衰弱し、第3病日に永眠された。【考察】112例の背景肝の内訳はB型肝炎ウィルス関連:18例、C型肝炎ウィルス関連:46例、アルコール性:38例、その他:10例であった。厚生労働省によると日本におけるVibrio vulnificus感染症はこれまで約200例を確認するのみで、免疫機能低下時や、肝硬変、肝癌など肝臓疾患のある患者に感染すると敗血症を引き起こし重篤化する。肝疾患関連死としては癌死、肝硬変死が多いが、出血のコントロールのみならず感染症への憂慮も必要である。
索引用語 Vibrio vulnificus感染症, 肝硬変