抄録 |
大腸手術後の吻合部狭窄に対して、内視鏡的バルーン拡張術(以下、拡張術)は有用な方法である。また、吻合部狭窄は直腸手術後よりも結腸手術後で頻度が少ない。今回、結腸手術後(手縫い吻合)に生じた吻合部狭窄の2例に対して、拡張術を施行したので、若干の文献的考察を加えて報告する。症例1。70歳代、男性。心房細動にて抗凝固剤投与中。平成20年1月、S状結腸癌(f stage ll)に対しS状結腸切除術を施行した。吻合は手縫いで行った。術後4病日で縫合不全を認めたが、保存的治療を行い治癒。その後は定期的に外来通院中であった。平成23年1月頃より腹痛を認め、平成24年1月の大腸内視鏡検査にて吻合部狭窄の診断となった。3月から5月までに、計3回の拡張術を行い、内視鏡が吻合部を通過できるようになった。最終の拡張術後から6ヶ月経過しているが、狭窄症状はなく経過観察中である。症例2。60歳代、男性。平成24年6月、早期S状結腸癌(SD junction近傍)に対して、腹腔鏡下結腸部分切除を施行した。吻合は手縫いで行った。縫合不全の兆候もなく、術後23病日に退院した。9月に術後腸閉塞の診断で入院となった。精査にて吻合部狭窄の診断なり、拡張術を施行した。拡張術後から腹部膨満と腹痛を認め、CTでも遊離ガス像を認めたため、拡張術後の穿孔の診断として開腹洗浄ドレナージ、ハルトマン手術を施行した。吻合部狭窄に対し、拡張術は低侵襲で内視鏡下で観察しながら安全に治療ができるという利点がある。しかし、拡張術で穿孔が生じると緊急手術となること、バルーンを拡張する時間、圧力設定、試行回数などについては明確なガイドラインは存在しない。安全に拡張術を施行するためには、狭窄部位の状態の評価、それに対するデバイスの選択や設定が必要であり、そのためには、さらなる症例の蓄積が必要と考えられた。また、症例によっては初回から再吻合を考慮することも必要と考えられた。 |