セッション情報 特別企画 初期研修医(卒後2年迄)

タイトル W-06:

アルコール性肝障害との鑑別が必要であったアミロイドーシスの2例

演者 小池 貴之(竹田綜合病院 初期研修医)
共同演者 田川 学(竹田綜合病院 消化器内科), 山口 佳子(竹田綜合病院 病理診断科), 冨永 邦彦(竹田綜合病院 病理診断科), 若林 博人(竹田綜合病院 消化器内科)
抄録 【目的】常習飲酒家のためアルコール性肝障害が疑われたが、死後にアミロイドーシスとの確定診断に至った2症例を経験したので、その診断の問題点を検討した。【症例1】55歳男性。生活保護を受けていた。腹部膨満、腹痛のため当院受診。黄疸、腹水を認め、アルコール性肝障害が疑われ入院となった。血液検査にてT.Bil5.5mg/dL、ALP2833IU/Lを認めた。心窩部痛精査のため上部消化管内視鏡検査を施行したところ、胃体中部から下部にかけて広範囲に胃潰瘍を認め、プロトンポンプ阻害薬を開始した。腹部超音波検査にて著明な肝腫大と肝腎コントラストの逆転を認めた。腹水検査では好中球数が増加しており、特発性細菌性腹膜炎と診断し抗生物質を開始した。第21病日の朝、心肺停止状態で発見され、肝臓necropsyにてアミロイド沈着を認めた。【症例2】70歳男性。腹部膨満、下腿浮腫が増悪し、アルコール性肝障害の診断で紹介となった。腹部膨満は著明な肝腫大のためであった。血液尿検査で高ALP血症、腎機能障害、蛋白尿を認めた。外来にて利尿薬を開始したが症状改善せず入院となった。アミロイドーシスを疑い直腸粘膜生検を施行したがアミロイド沈着は認めなかった。呼吸困難、胸水増加と腎不全増悪を認め第10病日に血液透析導入となった。第11病日に消化管出血によるショック状態のため心肺蘇生を必要とし、第13病日に永眠された。第9病日の十二指腸粘膜生検にてアミロイド沈着を認めた。剖検にて心臓、消化管、腎臓、肝臓にアミロイド沈着を認めた。【考察および結論】アルコール性肝障害はアルコール摂取歴とウイルス性肝炎を否定することによって診断されていることが多く、アミロイドーシスを含めた代謝性疾患は必ずしも除外されていないと考えられた。アルコール性肝障害の鑑別診断の一つとしてアミロイドーシスも考慮すべきである。アルコール摂取とアミロイド沈着との関連については今後の検討課題である。
索引用語 アミロイドーシス, アルコール