セッション情報 シンポジウム「B型肝炎治療の工夫」

タイトル S-11:

当院におけるB型肝炎ウイルスキャリアに対する免疫抑制療法症例の現状

演者 小林 智夫(東北労災病院 肝臓科)
共同演者 山川 暢(東北労災病院 肝臓科), 阿部 直司(東北労災病院 肝臓科)
抄録 【背景・目的】B型肝炎ウイルス(HBV)キャリアに対するステロイド等免疫抑制治療によりHBV再活性化をきたし重症肝炎が惹起される。2009年に厚生労働省研究班から免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドラインが発表され方針は示された。同ガイドラインの臨床現場での有効な活用のため当科で経験した症例を検討した。【対象】2012年10月までにHBVキャリアに対する免疫抑制療法の施行に際して核酸アナログを投与して経過観察が可能であった症例【結果】当院の診療科で免疫抑制療法を開始または開始予定の症例ではすべて免疫抑制療法導入前に当科に紹介されてHBVマーカーの評価を施行することが可能であった。核酸アナログの投与または投与予定の対応が可能であったためHBV再活性化をきたした症例は認めなかった。他院からの紹介症例で免疫抑制治療前のHBVマーカーの評価がなされていないものが3症例あり、当該診療科より当科に紹介された後に核酸アナログを投与した。そのうちステロイドとメトトレキサートの併用例とシクロスポリン投与例の2例は、HBV再活性化をきたすことなく核酸アナログで対応可能であった。残りの1例はステロイド投与例であったが、同薬減量の際にHBV再活性化により肝炎を発症していた。核酸アナログを投与して肝炎を収束させることに成功し、更に免疫抑制療法終了後に重症肝炎を惹起することなく核酸アナログを中止することが可能であった。【結語】B型肝炎対策ガイドラインは、HBVキャリアに対する免疫抑制療法に有効であるが、一部症例では活用されていなかった。同ガイドラインの他診療科への周知が今後の課題と考えられた。
索引用語 HBVキャリア, 拡散アナログ