セッション情報 一般演題

タイトル O-85:

膵性胸水を契機に診断された自己免疫性膵炎の一例

演者 柴田 昌幸(平鹿総合病院 消化器内科)
共同演者 水溜 浩弥(平鹿総合病院 消化器内科), 堀川 洋平(平鹿総合病院 消化器内科), 三森 展也(平鹿総合病院 消化器内科), 加藤 雄平(平鹿総合病院 消化器内科), 吉田 直樹(平鹿総合病院 消化器内科), 大久保 俊治(平鹿総合病院 消化器内科)
抄録 【はじめに】自己免疫性膵炎(AIP)は主膵管狭細が診断基準の一つである.高度主膵管狭細による膵液うっ滞から膵嚢胞を合併したAIP症例の報告が散見される.今回,膵液うっ滞から膵性胸水を合併したAIP症例を経験したので報告する.【症例】61歳男性.主訴は左胸部痛.飲酒歴2合/日.2012年1月上旬から左胸部痛が出現し近医を受診.左胸水を指摘され当院呼吸器科へ紹介となったが,外来での抗菌薬内服治療により胸水減少したため,1月下旬で終診となった.4月下旬から再び左胸部痛が出現し,5月1日呼吸器科再受診したところ,左胸水の増加を認め,精査目的に同科入院となった.胸腔ドレナージにて胸水はほぼ消失したものの,胸水アミラーゼ高値であり,膵性胸水精査のため当科転科となった.【経過】入院時腹部造影CTでは被膜様構造を伴う膵体尾部の腫大,膵尾側端に径1cmの嚢胞,左胸水を認めた.ERCPでは,主膵管は頭部で狭細,体部で狭窄しており,尾側主膵管は全く造影されなかった.膵体部からのEUS-FNAでは,線維性結合織が大部分で炎症細胞浸潤をほとんど認めず,悪性所見も認めなかった.IgG4高値(517mg/dl)からAIPと診断しステロイド投与を開始した.ステロイド投与後,膵腫大は改善し,膵嚢胞は消失した.ERCPで主膵管狭窄は著明に改善し,現在まで膵性胸水の悪化を認めていない.【考察】検索しえた限りでは,これまでのところ膵性胸水合併AIP症例の報告はない.膵液うっ滞を生じるほどの主膵管高度狭細,狭窄をきたした原因として,診断までの罹病期間が長かったことが考えられる.主膵管高度狭細,狭窄を伴う場合にはより慎重な鑑別診断が必要であると考えられた.
索引用語 自己免疫性膵炎, 膵性胸水