抄録 |
【症例】57歳、男性【主訴】狭窄症状、体重減少【既往歴・家族歴】なし【現病歴】1ヶ月前より摂食不良・嘔吐を主訴として前医を受診。上部消化管内視鏡にて胃癌の診断うけ, 精査目的に当科紹介となる。【入院時現症】血圧 120/80 mmHg, 脈拍 110回/分,体温 35.6℃ 貧血・黄疸なし。腹部平坦・軟、上腹部に軽度自発痛認める。採血ではCEA, CA19-9の上昇、脱水みとめた。画像上、前庭部を中心に胃角部まで全周性に肥厚みとめ、膵頭部との境界も不明瞭であった。小弯や左胃動脈幹、上腸間膜静脈沿いに著明なリンパ節の腫大みとめた。腹水や明らかな遠隔転移はみとめなかった。【手術1】十二指腸・膵への浸潤、一塊となったリンパ節転移、CY1にて根治的手術は困難と判断。胃空腸吻合術、腸瘻造設,腹腔ポート留置施行した。【経過1】術後PS0、経口摂取良好にて化学療法開始。Docetaxel+TS-1+CDDP (DCS) 。計7kur施行し腹水CY陰性化、腫瘍マーカー低下、リンパ節縮小等みとめ手術へ。【手術2】十二指腸のびらん・膵浸潤は依然みとめたがCY陰性、PDでR0の可能性ありと判断し膵頭十二指腸切除術施行した。合併症なく術後経過し退院。【経過2】術後補助化学療法S-1開始するも、自己判断で中止。5ヶ月後に下腹部不快感、食思不振にて来院。腹膜播種みとめS-1+PTX(iv.ip)開始。現在3kur施行し著明に症状改善、腫瘍マーカー低下した。【結語】DCS療法は、他因子複合の進行胃癌において、集学的治療における有用な選択肢になると思われる。 |