セッション情報 シンポジウム「B型肝炎治療の工夫」

タイトル S-06:

当科におけるB型肝炎治療の現況と問題点

演者 佐藤 亘(秋田大学医学部 消化器内科)
共同演者 後藤 隆(秋田大学医学部 消化器内科), 大西 洋英(秋田大学医学部 消化器内科)
抄録 【目的】B型肝炎に対する核酸アナログ治療としてLamivudine(LAM)、Adeforvir(ADV)、Entecavir(ETV)があり、第1選択薬であるETVは耐性株の少なさ、治療効果は良好である。しかし長期服用にともない耐性株が出現することがあることや発癌例が問題視されている。そこで当科におけるB型肝炎治療の現状を明らかにし、問題点や今後の方針を検討した。【方法】B型肝炎に対して抗ウィルス治療をし追跡可能な40例を対象とし、1群:LAM群、2群:LAM+ADV群、3群:ETV群、4群:ETV+ADV群に群別し、抗ウィルス効果につき検討した。また、肝癌発症例は5例(12.2%)あり、抗ウィルス効果との関連につき検討した。【結果】1群:4例(10%)HBV陰性化率は50%であった。DNA陽性のうち1例は非代償性肝硬変患者でLAM投与により、組織学的改善も得られ、服用後9年経過している。ただし、YIDD変異あり、ALT上昇あればADV追加予定である。1例は服用後8年経過し、HBV-DNA量3.6~4.1 logcopies/mlで推移している。2群:6例(15%)HBV陰性化率は100%であった。3群:27例(67.5%)HBV陰性化率は96.3%であり、6例はLAMからの切り替えであった。ETV不応例は1例で、HBV-DNA量は3.6~5.1 logcopies/mlまでで推移しており、ALTは正常値であるが、tenofovirの投与検討症例であった。4群:2例(5%)HBV陰性化例はないが2例ともHBV-DNA量は減少傾向にあり、ALTは正常値であった。1例はLAM投与で中毒疹がありADVへ変更、効果不良につきETVへ切り替え、ETV単独でDNA量の増加あり、ETV+ADVへ変更した。1例はLAM+ADV不応例からの切り替えで、HBV-DNA、ALTとも軽快している。HCCは5例に認め、男性が4例で背景肝は慢性肝炎が2例、肝硬変が3例であった。LAM群から1例、LAM+ADV群から2例、ETV群から2例であったがいずれもHBV陰性化しており、核酸アナログ製剤による発癌率低下は見いだせなかった。【結語】ETVやLAM+ADV不応例に対するETV+ADV療法は現時点ではHBV-DNA量の低下を認めており、試みるべき治療と考えられた。HCC発症に関して抗ウィルス効果に関連なく、核酸アナログ投与患者でも慎重なフォローが必要と考えられた。
索引用語 B型肝炎, 核酸アナログ