セッション情報 シンポジウム「B型肝炎治療の工夫」

タイトル S-13:

当院におけるHBV/HIV共感染者診療の現状

演者 梅津 輝行(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター)
共同演者 真野 浩(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター), 田邊 暢一(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター), 鵜飼 克明(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター), 田所 慶一(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター)
抄録 【はじめに】HIV感染者の死因は従来のAIDS関連死から肝疾患関連死へと変化してきている。小池らによるとMSM(men who have sex with men)の13%がHBVに共感染しているとされ、HIV/HBV共感染者は少なくとも6-10%と推定される。今後、HIV/HBV共感染者総数は増え続けることが予想される。今回は、現在当院へ通院中のHBV/HIV共感染者の現状について、検索可能であった慢性感染例4例について検討し、さらに急性B型肝炎を発症し一過性感染で治癒した1例を供覧する。【慢性感染例】4例全例が男性。全例に対し強力な抗HBV活性を有するテノホビル/エムトリシタビンの合剤(TDF/FTC)を含めた抗HIV療法が行われていた。HBVの状態では、HBe抗原陽性1名、HBe抗体陽性3名、HBV-DNAは未検出3名で1名が2.3 LC/mlであった。なおHIVの感染時期は不明であった。【一過性感染例】症例は25歳、男性。家族歴・既往歴に特記事項はないがMSMであった。現病歴では平成20年1月、手掌の皮疹にて近医(皮膚科)を受診、梅毒疹を疑われ当院皮膚科紹介となり、さらに肝機能障害を指摘され当科紹介となった。皮疹以外、特に自覚症状はなかった。検査値では総ビリルビン:2.2、AST:690、ALT:1580、LDH:494、プロトロンビン時間:104%、HBs抗原陽性、IgM-HBc:19.6、HBe抗原陽性、HBe抗体陰性、HBV-DNA:6.8LC/ml、HBV genotype A、HCV抗体陰性、HIV抗体陽性であった。肝不全兆候を認めないため外来で経過観察としたが、ALTは速やかに改善し、3月31日にはHBs抗原陰性化、7月31日にはHBs抗体陽性化を確認した。なお臨床的に後天性免疫不全(AIDS)は発症しておらず、経過中HIVに対する治療は行われなかった。【考察】現在、HBV/HIV共感染者におけるHBV感染はTDF/FTCを含めた抗HIV療法により良好にコントロールされるようになった。しかし、抗HBV薬として用いられている核酸アナログ製剤はすべてHIVの変異を誘導する可能性があり、HIV陽性者での単独使用は原則禁忌とされている。そのため、急性B型肝炎例に限らず、慢性B型肝炎例でも核酸アナログ製剤を投与しようとする際にはHIVのスクリーニングも考慮すべきと考える。
索引用語 HBV, HIV