セッション情報 シンポジウム「B型肝炎治療の工夫」

タイトル S-15:

B型肝炎治療のガイドラインと当院における治療の現状

演者 小原 範之(岩手県立中央病院 消化器科)
共同演者 城戸 治(岩手県立中央病院 消化器科), 池端 敦(岩手県立中央病院 消化器科)
抄録 【目的】B型肝炎、肝硬変に対する治療は核酸アナログ製剤(NA)、インターフェロン(IFN)治療の2種であり、HBV-DNA量などの因子に応じてそれぞれ単独またはseqential療法として用いるガイドラインを日本肝臓学会が基本指針として示している。今回我々は2012年のB型慢性肝炎治療ガイドラインと照らし合わせ、当科におけるB型肝炎治療の状況を検討した。【方法】2012年1月から11月までの間に当科を受診した、B型肝炎治療中の患者23例、HBs抗原陽性の患者36例、計59例に関して検討した。【結果】B型肝炎治療はNA単独が22例であり、IFN治療は1例のみであった。NAはETV単独が19例、LMV単独、LMV+ADV併用、ETV+ADV併用がそれぞれ1例ずつであった。ALT≧31IU/Lの症例は22例中7例だったが、HBV-DNA≧3log copies/mlはYVDD変異を認め、ETV+ADV併用されている一例のみであった。その他6例は3log copies/ml以下にコントロールされており、飲酒継続、脂肪肝合併、HCC合併、悪性リンパ腫に対する抗がん剤治療中の症例が含まれていた。IFN治療は1例のみであったが、これはHCV共感染例のPEG-INFα2b+リバビリン併用療法であり、治療後再燃例であった。また、NA投与中で悪性疾患を合併していたのは6例おり、2例はHCC合併、3例は血液疾患、1例は乳癌であった。HCC症例はいずれも初診時よりHCCを合併していた。血液疾患、乳がん症例はいずれもステロイドを含んだ抗がん剤治療が行われていた。治療を受けていないHBs抗原陽性患者において、ガイドライン上治療適応に含まれるのは36例中5例であった。5例中3例は初診後間もなく、治療方針を検討中の状態であった。他は治療導入を躊躇している症例と、進行した他臓器癌を合併している症例が一例ずつであった。【まとめ】当科においてはほぼガイドラインを順守した治療が行われていたが、GenotypeとHBc抗体の未検査例が多く含まれており、IFN有効例の絞り込みと、取り組みは不十分と考えられた。NAによる治療で多くはHBV-DNAをコントロール出来ていたが、YVDD変異のような症例を今後どのようにコントロールしていくかが重要になると考えられた。
索引用語 B型肝炎, 治療