セッション情報 一般演題

タイトル O-87:

乳癌術後6年目に可動性を有する腹部腫瘤として発見された膵頭部癌の一例

演者 沖田 啓(山形市立病院済生館 消化器内科)
共同演者 黒木 実智雄(山形市立病院済生館 消化器内科), 小野寺 基之(山形市立病院済生館 消化器内科), 名木野 匡(山形市立病院済生館 消化器内科), 芳賀 弘明(山形市立病院済生館 消化器内科), 三浦 敦司(山形市立病院済生館 消化器内科), 菊地 義文(山形市立病院済生館 消化器内科), 平川 秀紀(山形市立病院済生館 消化器内科)
抄録 【症例】50歳代女性【既往歴】平成18年に右乳癌にて手術。病理診断はpapillotubular carcinoma, stage2, ER(+), PgR(+), HER2(+)であった。術後ホルモン療法を施行された。【現病歴】平成24年1月から腹部の不快感を自覚し、近医で上部消化管内視鏡検査を施行された。逆流性食道炎の診断で加療を受けたが症状改善せず、前医でCTを施行したところ腹部腫瘤を指摘され、5月に当科を紹介され入院となった。【現症】上腹部に腫瘤を触知し、体位変換によって可動性を認めた。【血液検査】CEA 18.7 ng/mL, CA19-9 5081.7 U/mlと腫瘍マーカーの上昇を認めた。【経過】腹部超音波にて膵頭部に低エコーの不整腫瘤を認め、CTでは造影効果に乏しかった。MRIではT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を呈していた。また、腫瘍は周囲の脈管を巻き込んでおり、体位変換によって大動脈・十二指腸とともに可動性を有していた。肝両葉には転移と思われる複数の腫瘤を認めた。上部消化管内視鏡検査では上十二指腸角から下降脚にかけて発赤した不整な隆起を認め、超音波内視鏡にて膵頭部腫瘍との連続性が確認された。同部位から生検を施行したところ、adenocaricinoma,CK7(+),CK20(+/-),cdx-2(+),p53(+),MIB-1(40%),GCDFP15(-),ER(-),PgR(-),HER2(-)の診断であり、乳癌由来は否定的であった。病理学上は十二指腸癌も否定できなかったが、画像所見から膵頭部癌と診断し、S-1による治療を開始した。原発巣、肝転移に対してはPartial Responseを得ていたが、その後CTで多発肺転移が出現した。二次治療としてgemcitabineを開始し、現在も治療継続中である。【考察】膵は十二指腸とともに後腹膜に固定されており、可動性を有する膵腫瘍として発見されることは稀である。医学中央雑誌のweb版にて「膵腫瘍」「可動性」で検索すると、7例の報告を認めるのみであった。本症例において膵腫瘍が可動性を有した原因としては、膵・十二指腸・周囲脈管の先天的または後天的固定異常によるものが考えられる。本症例は画像診断上興味深い所見を認め、貴重な症例と考えられたので報告した。
索引用語 可動性, 膵腫瘍