セッション情報 特別企画 初期研修医(卒後2年迄)

タイトル W-02:

PPIにより増悪を来したと考えられる小腸NSAIDs潰瘍の1例

演者 加賀屋 沙永子(石巻赤十字病院 消化器内科)
共同演者 富永 現(石巻赤十字病院 消化器内科), 赤羽 武弘(石巻赤十字病院 消化器内科), 蒲 比呂子(石巻赤十字病院 消化器内科), 島田 憲宏(石巻赤十字病院 消化器内科), 松浦 真樹(石巻赤十字病院 消化器内科), 門間 大輔(石巻赤十字病院 消化器内科), 山本 康央(石巻赤十字病院 消化器内科), 加納 隆輔(石巻赤十字病院 消化器内科), 朝倉 徹(石巻赤十字病院 消化器内科)
抄録 【症例】77歳女性【主訴】下血【既往・服薬歴】陳旧性脳梗塞で前病院内科よりバファリンを、変形性膝関節症で整形外科よりロキソプロフェン、ロルノキシカムを処方。【現病歴・経過】2012年5月に下血あり当院へ救急搬送される。上部内視鏡で出血源不明であったが小腸からの出血が疑われ経口小腸内視鏡を施行。上部空腸に潰瘍出血が見られ止血術を施行した。服薬歴よりNSAIDs潰瘍が疑われた。その後再出血なくいったん退院。同年8月に再度下血見られ再入院。小腸内視鏡で胃・十二指腸・空腸に潰瘍が散見され、空腸潰瘍出血が確認されたため止血術を施行した。後日カプセル内視鏡で回腸にも出血性潰瘍を指摘され経肛門的小腸内視鏡を施行。止血術を追加した。病歴聴取にて整形のNSAIDsの服薬継続が確認されたため完全休薬とし、PPI・粘膜防御因子製剤を投薬し前医へ戻した。しかし10月に再度下血見られ再入院となった。CTにて空腸にextravasationを認め、小腸内視鏡を施行。空腸に潰瘍の多発と出血を認め止血術を施行した。病歴聴取上NSAIDsは休薬されておりPPI・粘膜防御因子の服用が遵守されていた。PPIによる小腸病変の増悪が疑われたため、同薬を中止した。その後は下血も落ち着き経過良好。第12病日にカプセル内視鏡を施行。小腸潰瘍の著明縮小が確認された。退院後は貧血の進行なく経過されている。【考察】近年NSAIDs服用増加に伴う消化管粘膜障害が増加しており、胃・十二指腸潰瘍に関してはPPI服用が再発予防に有用とされている。しかし2011年Wallaceらは小腸においてはPPIが増悪因子となりうることを報告している。本症例においてもPPIがNSAIDs潰瘍の治癒を遷延させた可能性があると考えられ、小腸病変の治療に対しては十分な注意が必要と考えられた。
索引用語 小腸NSAIDs潰瘍, PPI