セッション情報 一般演題

タイトル O-71:

腹腔内腫瘍の鑑別

演者 片山 原子(JR東京総合病院 消化器外科)
共同演者 小山 要(JR東京総合病院 消化器外科), 澤谷 哲央(JR東京総合病院 消化器外科), 平田 勝(JR東京総合病院 消化器外科), 田中 弦(JR東京総合病院 消化器外科), 関 邦彦(JR東京総合病院 臨床検査科)
抄録 【背景】腹腔内の腫瘍性疾患で、消化管由来の上皮性腫瘍は、頻度も高く、鑑別も比較的行いやすい一方で、それ以外は鑑別が難しい場合もある。今回、腹腔内を大きく占める腫瘍で、鑑別が難しかった症例を検討する。【症例】81歳女性。3年前より徐々に腹部が大きくなってきたが、食事は摂取でき、排便もあり、痛みはなかったため、経過観察していた。腹部がかなり大きくなり、やや便秘傾向になったため、他院を受診した。13年前に他院で子宮体癌で手術が行われており、無再発生存中である。腹部造影CTでは腹腔内を大きく占拠する、嚢胞成分も含まれる巨大腫瘍を認めるが、消化管との連続性は明らかでなかった。大網原発の間葉系腫瘍等を疑い、手術を施行した。腹腔内を大きく占める腫瘍は、3個の、充実性成分が主で嚢胞化して部分を含む腫瘍で占められ、その他、小さな、播種と考えられる小さな腫瘍を散発して認め、外科的に確認できたものをすべて摘出した。術後は、腹部膨満にに伴う諸症状は軽快した。標本の割面では、充実性成分が多く、出血・壊死で空洞を認めるが、粘液は認めず、漿液性腫瘍,類内膜性腫瘍が想定された。鏡見では、間葉系腫瘍の所見は認めず、嚢胞状になっている部分の内面の表面には乳頭状の癌の増殖を認め、PAX8陽性,CDX2陰性,CA125陽性であった。上皮性の低悪性度の癌腫であり、原発は、婦人科系臓器が考えられた。卵巣原発のlow-grade malignancyが最も考えられた。【考察】当症例は、子宮体癌で子宮および両側卵巣全摘が行われ、10年以上無再発生存中であった症例であるが、卵巣原発で矛盾しない癌腫が発生した点が注目される点である。極めて稀な現象と考えられるが、抄録提出後も、卵巣原発でよいのか、腹膜原発等他の原発臓器も考えられるのか等、さらに考察を進めて行きたい。【結語】婦人科臓器摘出後の症例であっても、婦人科臓器原発の新たな腫瘍が発生する可能性が示唆された。腹腔内腫瘍の鑑別において留意すべき点と考えられた。
索引用語 腹腔内腫瘍, 卵巣原発