セッション情報 一般演題

タイトル O-94:

来日12年後に上腹部痛を契機として発見された日本住血吸虫症の1例

演者 西瀬 雄子(山形大学 医学部 消化器内科)
共同演者 渡辺 久剛(山形大学 医学部 消化器内科), 勝見 智大(山形大学 医学部 消化器内科), 冨田 恭子(山形大学 医学部 消化器内科), 佐藤 智佳子(山形大学 医学部 消化器内科), 石井 里佳(山形大学 医学部 消化器内科), 奥本 和夫(山形大学 医学部 消化器内科), 齋藤 貴史(山形大学 医学部 消化器内科), 上野 義之(山形大学 医学部 消化器内科)
抄録 【症例】48歳 女性 【既往歴】胃潰瘍 【家族歴】父:胆嚢結石、母:心疾患 【生活歴】36歳時に来日したフィリピン人。飲酒歴:ビール コップ5杯/日 連日×20年、喫煙歴:20~40本/日×20年【現病歴】平成22年11月頃から右上腹部痛があり、平成23年1月近医を受診したところ、血液検査で肝機能障害を指摘され、超音波検査で肝硬変が疑われたため、当科紹介受診となった。【経過】血液検査所見ではALT優位の肝酵素上昇(AST/ALT 37/57 IU/L)とγ-GT上昇(198 IU/L)を認め、PT 79 %、PT-INR 1.13、ICG 12%、と軽度予備能低下を認めた。血小板数 21×104/μL、IgG 1260 mg/dl、肝炎ウイルスマーカーはHBs抗原陰性、HCV抗体陽性、HCVRNA 未検出、自己抗体は抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体、抗LKM-1抗体がいずれも陰性であった。腹部超音波検査では肝腫大と辺縁の鈍化を認め、肝実質は粗造であり、網目状に配列する線状高エコーを認めた。CT検査では肝両葉の腫大・変形と肝実質内に淡い線状~亀甲状の石灰化を認め、造影後は石灰化に一致して、あるいは石灰化の認められない部位にも線状~亀甲状の造影効果が認められた。また、上行結腸~横行結腸~下行結腸に腸管壁に沿った石灰化が認められ、日本住血吸虫症による繊維性隔壁および石灰化虫卵が疑われた。胆嚢内に胆石を認めるも胆嚢炎の所見はなかった。画像所見より日本住血吸虫症を疑い血清診断を行ったところ、抗日本住血吸虫虫卵抗体が陽性となったため、日本住血吸虫の感染状態にあると判定した。大腸内視鏡検査および肝生検は同意が得られず行われなかった。ブラジカンテルによる治療を希望されたため、保険適応外使用に関して山形大学医学部倫理委員会の承認を得て治療を行った。1年後の血清検査では抗日本住血吸虫虫卵抗体は陰性化していた。【考察】日本住血吸虫症は、1978年以降国内での新規発症例は報告されていないが、東南アジアにはいまだ流行地域が残ることから、輸入症例の報告が散見される。今後遭遇する可能性のある興味深い症例と考えられたため、文献的考察を加え報告する。
索引用語 日本住血吸虫症, 来日