抄録 |
【目的】B型慢性肝疾患に対して核酸アナログ製剤が広く投与されており、良好な治療成績が得られている。しかし、長期投与することにより低率ではあるが耐性株出現の問題がある。また、投与中止により肝炎の再燃の危険性があり安易に中止すべきでないとされている。今回我々は「核酸アナログ薬中止に伴うリスク回避のための指針2012」をもとに核酸アナログ製剤の中止可能性について検討した。【対象・方法】当院にて核酸アナログ製剤による治療を受けているB型慢性肝疾患患者50例(男41、女9)平均年齢57.2歳、ラミブジン4例、ラミブジン+アデホビル12例、ラミブジンからエンテカビル変更1例、エンテカビル30例、エンテカビル+アデホビル3例を対象とした。HBVDNA, HBsAg, HBcrAg, HBeAg, HBeAb, HBV genotype, core promotor,(CP)変異、precore(PC)変異を測定し、「核酸アナログ薬中止に伴うリスク回避のための指針2012」に基づき、HBsAg量およびHBcrAg量をスコア化して再燃の危険性を評価した。【成績】genotype A:B:C:不明/1:12:12:25, HBeAg(+):(-):不明/11:36:3、CP wild:mutant:不明/15:23:12、PC wild:mutant:不明/16:24:10、HBsAg 80IU/ml未満:80~800IU/ml:800IU/ml以上:不明/8:4:35:3、HBcrAg 3.0logU/ml:3.0~4.0logU/ml:4.0logU/ml;不明/17:10:16:7、HBVDNA 陰性:2.1未満:2.1以上:不明/27:8:14:1。 HBVDNA陰性およびHBeAg陰性で核酸アナログ投与2年以上に該当する症例は22例あり、この症例に対してスコア化し再燃の危険性を評価した。HBsAgスコア 0:1:2/4:3:14、HBcrAgスコア 0:1:2/9:7:4、再燃リスク評価すると低リスク群(0)1例、中リスク群(1~2)12例、高リスク群(3~4)7例であった。中リスク群には70歳以上3例含まれていた。【結論】低リスク群は1例のみであった。中リスク群は12例であったが70歳以上の高齢者が3例含まれており、これらの症例は中止すべきでなと考えられる。中リスク群の中止成功率は指針では約50%であり、中止に当たってはSequential療法などの併用が必要と考えらえた。 |