セッション情報 一般演題

タイトル O-26:

腹水濾過濃縮再静注法(CART)を併用しS-1+paclitaxel経静脈・腹腔内併用療法を行った腹膜播種を伴う進行胃癌の一例

演者 今村 秀道(太田西ノ内病院 消化器科)
共同演者 鈴木 聡(太田西ノ内病院 消化器科), 橋本 健明(太田西ノ内病院 消化器科), 草野 昌樹(太田西ノ内病院 消化器科), 間 浩正(太田西ノ内病院 消化器科), 今泉 博道(太田西ノ内病院 消化器科), 迎 慎二(太田西ノ内病院 消化器科)
抄録 症例は、20歳代男性。既往歴、家族歴に特記すべき事項なし。腹部膨満が出現し、増悪したため前医で受診。CTで、大量の腹水と胃、大腸壁の肥厚、両側水腎症が認められた。上下部消化管内視鏡検査と腹水細胞診から腹膜播種を伴う進行胃癌と診断され当科に入院となった。大量に貯留した腹水のため十分な食事量を摂取できず、腹水濾過濃縮再静注法(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy:CRAT)を予定され、6Lの腹水を穿刺排液し、濾過・濃縮された腹水1Lを再静注した。また、十分なICのうえ、paclitaxel経静脈・腹腔内併用療法を行った1日間を1コースとして、S-1を80mg/m2で14日間内服し、7日間休薬。Paclitaxelは第1日目および第8日目に50mg/m2を経静脈投与、20mg/m2を腹腔内投与する)。CRATは1回のみ施行され、副作用は認められなかった。また、paclitaxel経静脈・腹腔内併用療法に伴いGrade3の好中球減少症が認められたが、入院時に63Kgあった体重は退院時には48Kgとなり、腹囲が92cmから68cmに減少し、食事摂取量の増加がみられた。腹腔内にリザーバーを埋め込んでいなかったため、腹水量が著減した2コース以降は、paclitaxelは経静脈投与のみ行っているが、7コース終了現在、腹水の増量は認められず、原発巣は縮小傾向である。Paclitaxelは血中から腹水への移行が良好であり、経静脈投与による腹膜播種の治療効果治療効果が既に報告されているが、腹腔内投与により腹水中のPaclitaxel濃度を効率よく上昇させ、さらにそれを長時間維持することにより腹膜播種している癌細胞を選択的に消失させ得る。paclitaxel経静脈・腹腔内併用療法は、第二相臨床試験である程度の有効性が期待され、安全性に大きな問題を認めず、現在、標準療法であるS-1+CDDP併用療法との第三相臨床試験が行われている。CARTを併用することで全身・栄養状態の改善によりQOLが向上し、paclitaxel経静脈・腹腔内併用療法を行い腹水量の減少が認められた進行胃癌の一例を経験したので報告する。
索引用語 CART, S-1+paclitaxel